空港に降りて、荷物を受け取って、到着ロビーに出た瞬間に、多くの人が同じところで足を止めます。
両替の窓口です。
看板に書いてある英語が読めない。並んでいる列がどこまでなのかも分からない。自分の番が来たら何と言えばいいのかも分からない。
日本語なら「両替をお願いします」の一言で済むのに、英語になると最初の1語が出てこなくなります。
理由は語彙が足りないからではありません。
日本語の「両替」が、英語では2つの別々の行為に分かれているからです。ここを分けないまま窓口に立つと、言いたいことと相手が受け取る意味がずれます。
この記事では、辞書で確かめられることだけを使って、両替の英語を組み直します。
使ったのは Wiktionary の英語版・簡約版と、アメリカ税関国境警備局(CBP)の案内ページです。実際に開いて読めたページだけを出典として置き、開いていないページは1行も書いていません。
読み終えたときに手元に残るのは、窓口で言う順番に並んだ短い英文と、相手が返してくる英語の聞き取り方です。
両替の英語は「Can I exchange yen for dollars?」の1文で足ります|先に結論
窓口で最初に言う1文を決めておけば、両替はその時点で半分が終わります。
その1文がこれです。
Can I exchange yen for dollars?
円をドルに替えたいのですが、という意味です。
exchange A for B で「AをBに替える」の形になります。この for を落とすと、何を何に替えたいのかが相手に伝わりません。
替えたい先の通貨は、行き先に合わせて入れ替えるだけです。
イギリスなら pounds、ヨーロッパの多くの国なら euros、韓国なら won、タイなら baht になります。
通貨名が出てこないときの逃げ道もあります。
Can I exchange this, please?
お札を見せながらこれを言えば、通貨名を一度も言わずに両替が始まります。
窓口では、手に持っているお札そのものが this の中身を説明してくれます。英語が出ないときは、言葉の代わりに現物を出すのがいちばん速い解決です。
「両替」を change と訳すと英語が通じなくなる理由
日本の中学英語で「両替」を引くと、まず change が出てきます。
ところが英語の change は、窓口で使うと別の意味に着地します。
簡約版の Wiktionary は、名詞の change をこう説明しています。
When you get change for a bill, you get smaller bills or coins that equal the amount of the original bill.
お札に対する change とは、同じ金額になるより小さいお札や硬貨のことだ、という説明です。
つまり change の中心にあるのは「通貨を替える」ではなく「くずす」のほうです。
日本語の「両替」は、円をドルに替えることと、一万円札を千円札にくずすことの、両方を1語で背負っています。英語はこの2つを別の言葉で持っています。
この差が、窓口でのすれ違いを生みます。
大きなお札を出しながら Can I change this? と言うと、相手は「このお札をくずしたいのだな」と受け取ることがあります。同じ通貨の小さいお札が返ってくる可能性があるわけです。
逆に、レジで小銭が欲しいときに exchange を使うと、今度は「通貨交換の話をしている人」に見えます。
通貨をまたぐときは exchange、同じ通貨の中で細かくするときは change。この一本の線を引いておくだけで、窓口での事故はほとんど消えます。
出典=Simple English Wiktionary|change(2026年9月16日取得)
両替所の英語は国によって名前が変わります|bureau de change と currency exchange
窓口を探す段階でつまずく人もいます。
看板に出ている言葉が、国によって違うからです。
Wiktionary は bureau de change の成り立ちを、フランス語からそのまま借りた語(unadapted borrowing)だと説明しています。元の意味は「交換の事務所」です。
そして使われる地域について、こう書かれています。
bureau de change はイギリス・アイルランド・英連邦系の英語で使われる語で、北アメリカでは使われない、という趣旨の記述です。
代わりにアメリカとカナダで好まれるのが currency exchange や money exchange で、foreign / desk / office / counter / service といった語を足して使うとも書かれています。
だから看板の見え方はこうなります。
| 地域 | 看板に出やすい英語 | 読み方の目印 |
|---|---|---|
| イギリス・アイルランドなど | Bureau de Change | フランス語のまま。読めなくても change の字を探す |
| アメリカ・カナダ | Currency Exchange | exchange の字が目印 |
| 空港全般 | Foreign Currency Exchange | foreign が付くと「外貨」の窓口 |
| 両方で通じる聞き方 | Where can I exchange money? | 看板の語を知らなくても聞ける |
看板の語を覚えるより、聞く1文を覚えるほうが速いです。
Excuse me, where can I exchange money?
すみません、両替はどこでできますか、という意味になります。
空港の係員でも、ホテルのフロントでも、この1文はそのまま使えます。場所を聞く英語は、場面が変わっても形が変わりません。
出典=Wiktionary|bureau de change(2026年9月16日取得)
両替で必ず出てくる commission は「手数料」のことです
窓口の前に立つと、レートの数字と一緒に commission という語が目に入ります。
Wiktionary は、名詞 commission の語義のひとつをこう書いています。
A fee charged by an agent or broker for carrying out a transaction.
取引を代わりに行う側が取る手数料のことだ、という説明です。
語源も同じ方向を向いています。ラテン語の committō(一緒に送る)から来ていて、「任せる」という核が残っています。任せた相手が取る分、という発想です。
日本語では「手数料」と「レート」を別々に考えますが、英語の窓口ではこの2つがセットで提示されます。だから聞くときも2つ続けて聞きます。
What’s the rate, and do you charge a commission?
レートはいくらですか、手数料は取りますか、という意味です。
もっと短くしたいなら、こうです。
Is there a fee?
手数料はかかりますか、という一言になります。fee は commission より広い語なので、窓口でも売店でも使い回せます。
レートと手数料の実際の数字は、店ごとにも日ごとにも変わります。この記事では数字を書きません。書くべきなのは数字ではなく、その場で数字を聞き出す1文のほうです。
出典=Wiktionary|commission(2026年9月16日取得)
お札の英語は bill と note で分かれます|両替の受け取りで効いてきます
両替が終わると、相手はお札を数えながら何かを言います。
そこで出てくるのが bill と note です。
Wiktionary の banknote の項目には、省略形として note(とくに英連邦系)と bill(とくに北アメリカ)が並んでいます。どちらも banknote の短い言い方だ、という説明です。
同じ紙のお金なのに、呼び名が海をまたぐと変わるわけです。
| 言いたいこと | アメリカ側の言い方 | イギリス側の言い方 |
|---|---|---|
| 20のお札 | a twenty-dollar bill | a twenty-pound note |
| 小さいお札で欲しい | Could I have smaller bills? | Could I have smaller notes? |
| 硬貨も少し欲しい | Could I have some coins, too? | Could I have some coins, too? |
| お札をくずしたい | Could you break this, please? | Could you change this, please? |
どちらの語を使っても、窓口の人はまず通じます。大事なのは、相手が note と言ったときに「お札のことだ」と分かることです。
受け取ったあとに大きなお札ばかりだと、バスや自動販売機で困ることがあります。
その場で言えるのがこの1文です。
Could I have some smaller bills, please?
もう少し小さいお札でもらえますか、という意味になります。
窓口を離れてから気づくと、もう一度並び直すことになります。お札の大きさは、受け取る前に言うのが正解です。
出典=Wiktionary|banknote(2026年9月16日取得)
両替の窓口で交わす英語を、実際の順番に並べ直します
単語を覚えても、順番が分からないと固まります。
窓口の流れは、だいたい5つの段に分かれます。
① 自分の番が来たら、最初に用件を1文で言う
Hi. Can I exchange yen for dollars?
最初に Hi を置くだけで、声の出だしが楽になります。用件は1文で十分です。
② 金額を伝える
All of this, please.
手に持っているぶん全部、という意味です。数字を英語で言う自信がないときは、お札を出してこの一言で足ります。
金額を口で言うより、お札をそのまま出すほうが確実です。窓口の人は目の前で数えてから金額を復唱してくれます。
③ パスポートを求められる
Here you are.
どうぞ、という意味です。パスポートの提示を求めるかどうかは国と店によって違うので、最初から手元に出しておくと流れが止まりません。
④ レートと手数料を確認する
How much will I get after the fee?
手数料を引いたら、いくら受け取れますか、という意味です。レートの数字が読めなくても、受け取る額を直接聞けば話は終わります。
⑤ 受け取って、その場で数える
Thank you. Let me just count it.
ありがとうございます、少し数えさせてください、という意味です。数えるのは失礼ではありません。窓口の前で数え終えるまでが両替です。
両替でそのまま使える英語の言い方(場面別の表)
窓口で使う言い方を、言いたいことから引ける形に並べます。
| 言いたいこと | 言う英語 | 意味 |
|---|---|---|
| 両替したい | Can I exchange yen for dollars? | 円をドルに替えられますか |
| 通貨名を言わずに頼む | Can I exchange this, please? | これを両替できますか |
| 場所を聞く | Where can I exchange money? | 両替はどこでできますか |
| レートを聞く | What’s today’s rate? | 今日のレートはいくらですか |
| 手数料を聞く | Do you charge a commission? | 手数料はかかりますか |
| 受取額を聞く | How much will I get? | いくら受け取れますか |
| 小さいお札で欲しい | Could I have smaller bills? | 小さいお札でもらえますか |
| 硬貨が欲しい | Could I have some coins for the bus? | バス用の硬貨をもらえますか |
| くずしたい | Could you break this, please? | これをくずしてもらえますか |
| 全部替える | All of this, please. | これ全部でお願いします |
| 半分だけ替える | Just half of this, please. | これの半分だけお願いします |
| やめるとき | I’ll think about it. Thank you. | 少し考えます、ありがとうございます |
12個ありますが、全部は要りません。最初の1つと、レートか手数料を聞く1つ、そして小さいお札を頼む1つ。この3つで窓口は越えられます。
相手が言ってくる英語と、その聞き取り方
自分の言う英語より、相手の英語のほうが難しく感じます。
窓口で返ってくる言葉は、実は種類が多くありません。
| 相手が言うこと | 意味 | 返し方 |
|---|---|---|
| How much would you like to exchange? | いくら両替しますか | All of this, please. |
| May I see your passport? | パスポートを見せてください | Here you are. |
| Could you sign here? | ここにサインをお願いします | Sure. |
| How would you like it? | お札の内訳はどうしますか | Smaller bills, please. |
| There’s a fee for this. | 手数料がかかります | How much is it? |
| Please wait a moment. | 少しお待ちください | Of course. |
どうしても聞き取れなかったときの1文も決めておきます。
Sorry, could you say that again, more slowly?
すみません、もう一度ゆっくり言ってもらえますか、という意味です。
聞き返すのは失敗ではありません。窓口の人は毎日これを言われています。分からないまま頷くほうが、あとで面倒になります。
それでも分からないときは、紙とペンを指して Could you write it down? と言えば、数字は必ず紙の上に出てきます。
両替の英語でやってはいけない言い方
通じない言い方には、共通の型があります。
1つ目は、日本語の助詞をそのまま置き換えることです。
exchange yen to dollars と言ってしまう人が多いのですが、exchange と組むのは for です。to を使うと、相手が一瞬止まります。
2つ目は、money と cash を混ぜることです。
両替の話をしているのに Can I cash this? と言うと、小切手などを現金化したいのかと受け取られることがあります。窓口では exchange を選びます。
3つ目は、Please だけで頼むことです。
Please. とだけ言われても、相手には何をしてほしいのかが分かりません。Can I 〜 ? か Could you 〜 ? の形に、動詞を1つ入れてから please を付けます。
4つ目は、金額を口頭だけで詰めることです。
数字は聞き間違いが起きやすいところです。電卓の画面、レシート、紙に書いた数字。目で見える形にしてから頷くほうが安全です。
大金を両替して持ち歩く前に|アメリカは1万ドル超で申告が要ります
現地で両替せず、日本でまとめて替えてから持ち込む人もいます。
その場合に一次ソースで確かめておきたい決まりが1つあります。
アメリカ税関国境警備局(U.S. Customs and Border Protection)のページには、アメリカに出入りする際、1万ドルを超える額は申告しなければならないと書かれています。書類は FinCEN Form 105 です。
同じページには、持ち込める額そのものに上限があるとは書かれていません。上限ではなく「超えたら申告する」という決まりです。
家族や団体で移動する場合についても記述があります。
When families or groups are involved, the $10,000 threshold applies to the total amount they are carrying or sending collectively, not per individual.
家族や団体のときは、1人あたりではなく全員の合計で見る、という意味です。
4人家族で分けて持てば大丈夫、という考え方が通らないことになります。
これはアメリカの決まりで、他の国には他の国の決まりがあります。行き先の国のものは、その国の税関のページで確かめてください。
出典=U.S. Customs and Border Protection|Money and Other Monetary Instruments(2026年9月16日取得)
両替の英語でよくある質問
exchange と change は、結局どちらを使えばいいですか
通貨をまたぐときは exchange、同じ通貨の中でお札を細かくするときは change です。
簡約版 Wiktionary の change の説明が「同じ額になる小さいお札や硬貨」である以上、通貨交換の意味を change だけに背負わせるのは無理があります。
両替所の看板が読めないときは、どう探せばいいですか
Where can I exchange money? と人に聞くほうが速いです。
看板の語は地域で変わりますが、この質問文はどこでも同じ形で通じます。
レートの数字が読めないときはどうしますか
How much will I get? と、受け取る額のほうを直接聞きます。
レートを理解しなくても、手元に来る金額さえ分かれば判断できます。
両替のときにパスポートは必要ですか
求められることがあります。
国や店によって違うため、この記事では「必ず要る」とも「要らない」とも書きません。手元に出しておけば、どちらでも流れは止まりません。
硬貨が欲しいときは何と言えばいいですか
Could I have some coins? で通じます。
用途を足すとさらに伝わります。coins for the bus、coins for the locker のように、使い道を1語添えるだけです。
両替の英語は、この1文だけ覚えて帰ってください
最後に1文だけ残します。
Can I exchange this, please?
これを両替できますか、という意味です。
通貨名も、金額も、レートも、この1文には入っていません。それでも窓口は開きます。あとは相手が聞いてくることに答えるだけです。
そして覚えておくのは、言葉の線を1本だけです。
通貨をまたぐなら exchange。同じ通貨の中でくずすなら change。
この線さえ引けていれば、看板が読めなくても、レートが分からなくても、窓口の前で固まることはなくなります。
出発前にもう一度だけ、声に出して言ってみてください。Can I exchange this, please? その一度が、現地での最初の1語を軽くします。
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