
屋台の英語で最初に口が止まるのは、湯気の立つ鍋の前に立って、何をどう頼めばいいのか分からなくなる場面です。
日本語なら「屋台」の一語で済みます。
博多の川沿いに並ぶラーメンの店も、夏祭りの焼きそばも、台湾の夜市の唐揚げも、ぜんぶ屋台です。
ところが英語には、この一語にぴたりと重なる語が見当たりません。
ロンドンの市場では stall と呼ばれ、ニューヨークの歩道では cart や truck と呼ばれます。
シンガポールに行くと、屋台を集めた建物そのものが hawker centre という名前になっています。
売っている人の呼び名も vendor、hawker、trader、stallholder と場所ごとに変わります。
そこへ店の人が早口で何か聞いてきます。
For here or to go? と聞かれているのに、何の二択なのか分からずに固まります。
Cash only と書かれた紙が貼ってあることに、注文が終わってから気づきます。
Spicy? と聞かれて Yes と答えたら、思っていたよりずっと辛い皿が出てきます。
食べ終わってトレーをそのままにして立とうとすると、隣の人に呼び止められます。
つまずく理由は単語を知らないからではなく、「屋台」という一語が英語では形と場所と国ごとに割れているからです。
そして、その割れ方は辞書だけでなく、各国の役所が決めた許可や決まりで固まっています。
この記事では Cambridge Dictionary で47語を引き、見出し語があった34語の語義を1個ずつ数えました。
合計は327個でした。
残る13語は hawker centre、night market、food stall、chopsticks などで、どれも見出し語そのものがありませんでした。
そのうえで、シンガポール国家環境庁(NEA)のホーカー管理のページ、同庁とシンガポール食品庁の共同の発表、ユネスコの無形文化遺産のページ、ニューヨーク市保健局の移動販売のページ、英国政府 GOV.UK の路上販売の許可のページ、そして福岡市屋台基本条例の全文という6つの原文を読みました。
出典として並べたのは、この記事を書きながら実際に開けたページだけです。
開けなかったページの内容は一文字も書いていません。
屋台の英語は「One of these, please.」の1文|stallとstandより先に結論
結論から書きます。
One of these, please.
これをひとつください、という意味です。
鍋や串や見本を指さしながら、この一文をそのまま言えば注文が通ります。
料理の名前を知らなくても、発音に自信がなくても、指が名前の代わりをしてくれます。
数を変えたいときは One を Two に差し替えるだけです。
Two of these, please.
これを2つください、という意味になります。
値段を先に知りたいときは、指をさしたまま How much を付けます。
How much is this one?
これはいくらですか、という意味です。
払い方が気になるときは、カードが使えるかを先に聞きます。
Do you take cards, or is it cash only?
カードは使えますか、それとも現金だけですか、という意味です。
この4文には、stall も stand も vendor も入っていません。
屋台の名前は言わなくていいのです。
目の前に屋台があって、店の人がいて、指させる料理がある場面では、場所の名前を口にする必要がそもそもありません。
屋台の名前が要るのは、屋台を探しているときと、屋台について話すときだけです。
そのときに使う語がなぜ1つに決まらないのかを、ここから辞書の語義の数でほどいていきます。
屋台の英語をstallと言い切れない理由|Cambridgeが並べるstallの語義17個の内訳
Cambridge Dictionary で stall を引くと、語義が17個並びます。
内訳は、英英の学習者辞典に10個、米語の辞典に4個、ビジネス英語の辞典に3個です。
英英の学習者辞典の1個目は「a large table or a small shop with an open front from which goods are sold in a public place」でした。
人の集まる場所で物を売る、大きな台か、前が開いた小さな店、という説明です。
例文は In the village market, the stalls are piled high with local vegetables. でした。
村の市場では、stall に地元の野菜が山積みになっている、という文です。
日本語の「屋台」にいちばん近いのは、この1個目の語義です。
ところが2個目から先は、屋台とは別の話になります。
2個目は、牛や馬を1頭ずつ入れておく、家畜小屋の中の仕切りです。
3個目は、壁やカーテンで部屋の一部を区切った小さな場所で、例文に shower stall が載っていました。
4個目は教会に並ぶ固定の座席で、5個目は劇場や映画館の1階席です。
英英側の残る5個は動詞で、エンジンが止まる、返事を引き延ばす、物事が進まなくなる、という意味でした。
米語の辞典の4個には、物を売る台という語義が1つも入っていません。
入っているのは、時間を稼ぐ、エンジンが止まる、家畜の仕切り、何かの目的で使う小さな囲いの4つです。
米語側の例文には The bathroom had a tiled shower stall. が載っていました。
米国の辞書の側では、stall は売り場よりもシャワーやトイレの仕切りに寄っています。
ビジネス英語の辞典の3個のうち、売る台の意味は「a table or structure from which someone sells things on the street or in an outdoor market」の1個だけでした。
路上や屋外の市場で物を売るための台や構造物、という説明です。
例文は She set up a stall at the fair to sell her jewelery. でした。
お祭りで自分のアクセサリーを売るために stall を出した、という文です。
17個のうち、物を売る台の意味は2個だけで、残る15個は家畜や座席やエンジンの話です。
英国で market stall と言えば屋台に着地しますが、米国で stall とだけ言うと、相手の頭に浮かぶのはシャワーの仕切りかもしれません。
だから屋台を探すときは、stall の前に何を売っているかを付けると外れません。
Is there a noodle stall around here?
このあたりに麺の屋台はありますか、という意味です。
食べ物を売る場所だと前の語で決まるので、stall が家畜小屋や座席に化けることはありません。
屋台の英語をstall・stand・booth・kiosk・cartで並べ直したときの語義の数の差
屋台の形をあらわしそうな名詞を5つ引いて、語義の数を並べました。
| 語 | 語義の数 | 物を売る場所の語義 | 形のイメージ |
|---|---|---|---|
| stall | 17個 | 2個 | 台か、前が開いた小さな店 |
| stand | 49個 | 3個 | 小さな店や売り台 |
| booth | 7個 | 3個 | 半分囲われた区画や小さなテント |
| kiosk | 5個 | 3個 | 窓口から売る小さな建物 |
| cart | 8個 | 1個 | 車輪の付いた台 |
いちばん語義が多いのは stand で、49個ありました。
内訳は英英側に22個、米語側に12個、ビジネス英語側に15個です。
立つ、我慢する、選挙に出る、裁判にかけられる、意見、スタジアムの観客席、木立まで、意味の幅がとても広い語です。
その中で物を売る場所の語義は3個でした。
英英側は「a small shop or stall or an area where products can be shown, usually outside or in a large public building, at which people can buy things or get information」です。
米語側は「a small structure where food, newspapers, candy, and other small items are sold」でした。
売られる物の筆頭に food が来ているのは、5語のうち米語側の stand だけでした。
米国の辞書の側では、stand が食べ物の屋台にいちばん寄っている語です。
次に booth を見ます。
語義は7個で、英英側に3個、米語側に3個、ビジネス英語側に1個です。
英英側の2個目が「a partly closed area or small tent at a fair, exhibition, or similar event」でした。
お祭りや展示会で、半分囲われた区画か小さなテント、という説明です。
同じ英英側に、レストランの壁ぎわの向かい合わせの長椅子の席という語義も入っています。
同じ booth でも、お祭りの区画とレストランの席は前後の語で読み分けます。
kiosk は語義5個で、英英側の1個目が「a small building where things such as chocolate, drinks, or newspapers are sold through an open window」でした。
開いた窓口からチョコレートや飲み物や新聞を売る小さな建物、という意味です。
ビジネス英語側には、券や情報を出す機械という語義も入っていて、駅やホテルの自動の端末も kiosk と呼ばれます。
cart は語義8個で、英英側に6個、米語側に2個です。
英英側の4個目が「a table on four small wheels with one or more shelves under it, used for serving food or drinks」でした。
食べ物や飲み物を出すための、4つの小さな車輪が付いた台、という説明です。
それ以外は馬車、買い物用のカート、ウェブサイトの買い物かごなどでした。
屋台の意味をはっきりさせたいときは、2語の food cart を使います。
food cart の語義は2個で、1個目が「a small vehicle with wheels but no engine from which hot food can be sold」から始まります。
エンジンの無い、温かい食べ物を売る小さな車、という意味です。
例文は I had lunch at a hot dog food cart. でした。
ホットドッグの food cart で昼ごはんを食べた、という文です。
2個目は列車や飛行機の中を回ってくるワゴンのことで、車内販売のカートも food cart です。
もう1語、barrow も引きました。
語義は3個で、2個目が「a vehicle moved by a person from which fruit and vegetables, etc. are sold at the side of a road」です。
人が押して動かし、道ばたで果物や野菜を売る車、という意味で、日本の引き売りの屋台にいちばん近い語でした。
台なら stall、米国の食べ物なら stand、テントなら booth、窓口なら kiosk、車輪なら cart と覚えると、形で選べます。
屋台の英語で売る人を指す語|vendor・hawker・trader・stallholderの違い
屋台の形の次は、屋台で売る人の呼び名です。
4語を引いて、語義の数を並べました。
- vendor:5個(英英1個・米語2個・ビジネス英語2個)
- hawker:1個
- trader:5個(英英2個・米語1個・ビジネス英語2個)
- stallholder:2個(英英1個・ビジネス英語1個)
vendor の英英側の語義は「someone who is selling something」の1個だけでした。
何かを売っている人、というとても広い説明です。
例文に For the past few months she’s been working as a street vendor, selling fruit and vegetables. が載っています。
ここ数か月、果物と野菜を売る street vendor として働いている、という文です。
米語側の2個目は「A vendor is also a person who sells food or goods on the street」で、例文が a hot dog vendor でした。
路上で食べ物を売る人という意味が、米語側の vendor にははっきり入っています。
2語の street vendor を引くと、語義は2個でした。
英英側は「someone who sells something from a public place by the side of a street, often from a stall … or cart …, instead of from a fixed shop」です。
決まった店ではなく、stall や cart から道ばたで売る人、という説明で、前の章の2語がそのまま定義の中に入っています。
ビジネス英語側は「someone who sells food or other goods in the street, sometimes illegally」でした。
最後に sometimes illegally、つまり許可を取らずに売っている場合もある、と付いています。
この「許可」の話は、あとの章でニューヨークと英国の決まりとして出てきます。
hawker の語義は1個だけで、「someone who sells goods informally in public places」でした。
人の集まる場所で、正式な店を構えずに物を売る人、という意味です。
英英の辞書では informally が付いている hawker が、シンガポールでは国の役所が管理する屋台の店主の呼び名になっています。
trader の英英側の1個目は「a person who buys and sells things」で、例文が His father is a market trader, selling fruit and vegetables. でした。
父親が市場で果物と野菜を売っている、という文です。
2個目は株や通貨を売り買いする人で、こちらは屋台と関係ありません。
stallholder の英英側は「a person who rents or owns a stall in a market」でした。
市場で stall を借りているか持っている人、という意味で、場所代を払っている店主という含みがあります。
ビジネス英語側の例文は Stallholders at the market pay rent to the city. でした。
市場の stallholder は市に賃料を払っている、という文です。
屋台で店の人に呼びかけるときは、この4語のどれも使いません。
Excuse me か Hi で十分です。
4語が出てくるのは、看板や案内や役所のページを読むときです。
もう1語、pitch も引きました。
語義は30個で、英英側の6個目が「a place in a public area where a person regularly sells goods or performs」でした。
人の集まる場所で、いつも物を売ったり芸をしたりする持ち場、という意味です。
屋台そのものではなく屋台が立つ「持ち場」を言う語として、pitch があります。
ただし30個のうち残りの29個は、サッカー場、音の高さ、売り込み、野球の投球、テントを張ることなど、屋台以外の話です。
屋台の英語で場所を指す語|street food・food truck・food court・marketの語義の数
屋台の形と人の次は、屋台が集まる場所の語です。
いちばん先に覚えたいのは street food です。
語義は1個だけで、「food that is cooked and sold in public places, usually outdoors, to be eaten immediately」でした。
人の集まる場所で、ふつうは屋外で、調理されて売られ、すぐに食べるための食べ物、という説明です。
例文に a street food market が載っていました。
屋台そのものを指す語は割れていても、屋台で売る食べ物は street food の1語で決まります。
だから屋台を探すときは、場所の名前より食べ物の名前で聞くほうが通ります。
Where can I find street food around here?
このあたりで屋台の食べ物はどこで食べられますか、という意味です。
food truck の語義も1個で、「a vehicle in which food can be cooked and sold, that moves from place to place」でした。
中で調理して売れる、場所を移っていく車、という意味です。
例文は Food truck operators use social media to inform customers where they will be. でした。
food truck の店主は、どこに出るかをSNSで客に知らせる、という文です。
屋台が毎日同じ場所にいるとは限らない、という前提がこの例文に入っています。
food court の語義も1個で、「a large area or room, for example inside a shopping centre, where there are small restaurants selling many different types of food that you can eat at tables in the middle of the area」でした。
ショッピングセンターの中などにある広い場所で、小さな店が並び、真ん中のテーブルで食べられる、という説明です。
屋台を屋内に集めた形は、英語では food court がいちばん近い語になります。
market の語義は33個で、英英側に8個、米語側に5個、ビジネス英語側に20個ありました。
そのうち場所の意味は、英英側の「a place or event at which people meet in order to buy and sell things」などごく一部です。
ビジネス英語側の20個は、ほぼすべてが需要、市況、株式市場の話でした。
一方で、引いても見出し語が無かった語があります。
- night market(夜市)
- hawker centre と hawker center(ホーカーセンター)
- food stall と street stall と market stall
- street market と street trader
- hot dog stand と food van と burger van
どれも現地の看板や案内ではふつうに使われている組み合わせですが、Cambridge Dictionary では1つの見出し語として立っていませんでした。
つまり2語の意味をそのまま足して読む語です。
night market は夜の市場、food stall は食べ物の stall で、辞書に載っていなくても意味は崩れません。
夜市は night marketで通じます。
台湾やタイの夜市を英語で案内するページで Night Market と書かれていたら、それは日本語の夜市と同じものだと読んでかまいません。
屋台の英語で注文する|指さしと数で通す言い方
ここからは、屋台の前で実際に使う文です。
最初の一文は、記事の冒頭に置いたものと同じです。
One of these, please.
指さしが通じない距離のときは、料理の名前を言います。
Can I get the chicken, please?
チキンをください、という意味です。
何がおすすめかを聞きたいときは、What で始めます。
What’s popular here?
ここでは何が人気ですか、という意味です。
店の人が鍋や串を指して答えてくれたら、そのまま One of those, please. と返せば注文が終わります。
these は自分の近くのもの、those は少し離れたものを指すので、店の人が指したものには those を使います。
屋台が混んでいて列があるときは、列の最後を確かめます。
Is this the queue?
これは列ですか、という意味です。
queue の語義は13個で、英英側に5個、米語側に1個、ビジネス英語側に7個ありました。
英英側の1個目は「a line of people, usually standing or in cars, waiting for something, or a lot of people who want something」です。
例文に If you want tickets you’ll have to join the queue. と、割り込みを言う jumps the queue が載っていました。
米語の辞典の queue は「a line of people or things waiting for something」なので、Is this the line? と言っても同じ列を指せます。
串はskewerとstickのどちらで言うか
焼き鳥やサテのような串の料理は、屋台でよく見かける形です。
skewer の語義は5個で、英英側に4個、米語側に1個でした。
英英側の1個目は「a long, thin metal or wooden pin used for holding together pieces of food, especially meat, during cooking」です。
調理のあいだ食べ物、特に肉をまとめておく、金属か木の長く細い串、という説明です。
2個目は「a long, thin metal or wooden pin with pieces of food on it」で、食べ物が刺さった状態の串そのものを指します。
例文に Small chicken and vegetable skewers cook quickly が載っていました。
鶏肉と野菜の小さな skewer はすぐに焼ける、という文で、料理としての串焼きも skewer と数えられることが分かります。
一方の stick は語義26個で、英英側だけで16個ありました。
1個目は「a thin piece of wood or other material」で、木の細い切れ端のことです。
例文に A lollipop is a sweet on a stick. が載っていました。
棒付きキャンディーは棒に付いたお菓子だ、という文です。
それ以外は、杖、ホッケーのスティック、貼り付ける、突き刺す、我慢する、田舎など、意味がばらばらに広がっています。
串焼きを頼むなら、語義が5個しかない skewer のほうが料理の話に着地します。
Three chicken skewers, please.
鶏の串を3本ください、という意味です。
屋台の黒板に on a stick と書かれていたら、それは棒に刺して出す食べ物だと読みます。
辛さはspicy・hot・mildの3段で聞く
屋台で聞き返されやすいのが辛さです。
spicy の語義は4個で、英英側の1個目が「containing strong flavours from spices」でした。
香辛料の強い風味が入っている、という意味です。
例文は Do you like spicy food? でした。
屋台で店の人に Spicy? と聞かれたら、辛いのは平気か、辛くしていいか、のどちらかを聞かれています。
hot の語義は18個で、英英側の1個目は「having a high temperature」でした。
温度が高い、という意味で、例文に a hot drink/meal が並んでいます。
2個目が「used to describe food that causes a burning feeling in the mouth」で、こちらが辛いの意味です。
米語側の例文には If you like curry really hot, you can add some hot peppers and hot sauce. が載っていました。
hot は熱いと辛いの両方です。
湯気の立つスープを指して hot と言われたら熱い、赤い唐辛子を指して hot と言われたら辛い、と目の前の物で読み分けます。
辛さを控えてほしいときは mild を使います。
mild の語義は8個で、英英側の3個目が「used to describe food or a food flavour that is not very strong」でした。
例文は He doesn’t like a hot curry – he prefers a mild one. です。
彼は辛いカレーが好きではなく、マイルドなほうがいい、という文で、hot と mild が対になって出てきます。
Not too spicy, please.
あまり辛くしないでください、という意味です。
辛いのがまったくだめなら、No chili, please. と唐辛子そのものを外してもらいます。
食べられない食材があるときは、辛さとは別に、その食材の名前をはっきり伝える必要があります。
屋台の英語で払う|cash・change・receipt・contactlessの語義の数
屋台で最後につまずくのが支払いです。
cash の語義は8個で、英英側に2個、米語側に2個、ビジネス英語側に4個でした。
英英側の1個目は「money in the form of notes and coins」で、紙幣と硬貨の形のお金のことです。
ビジネス英語側の例文に、Be warned: most gas stations in the area take cash only. が載っていました。
このあたりのガソリンスタンドはほとんど現金だけだから注意して、という文です。
2語の cash only も引くと、ビジネス英語側に語義が2個ありました。
1個目が「used to describe a payment that you can only make with cash, and not by cheque, bank card, etc.」です。
屋台に Cash only と貼ってあれば、カードも小切手も使えず、紙幣と硬貨だけという意味です。
カードを使いたいときに聞く語は contactless です。
contactless の語義は2個で、英英側が「relating to the use of wireless technology to make a payment using a credit card or debit card, or a mobile phone」でした。
クレジットカードやデビットカード、携帯電話をかざして無線で払うこと、という説明です。
Can I pay contactless?
かざして払えますか、という意味です。
change の語義は40個で、34語のうちいちばん多い語でした。
英英側に21個、米語側に10個、ビジネス英語側に9個あります。
お金の意味は英英側に3個あり、硬貨、両替した小さいお金、そしてお釣りです。
お釣りの語義は「the money that is returned to someone who has paid for something that costs less than the amount that they gave」でした。
渡した額より安い物を買った人に返されるお金、という説明です。
大きな紙幣しか無いときは、先に聞いておくと屋台の人が困りません。
Do you have change for a twenty?
20の紙幣でお釣りはありますか、という意味です。
receipt の語義は9個で、英英側の1個目は「something such as a piece of paper or message proving that money, goods, or information have been received」でした。
お金や物を受け取ったことを証明する紙やメッセージ、という意味です。
屋台では受け取りの紙が出ないことも多いので、要るときは Can I have a receipt? と自分から言います。
カードが使えるかを店先で聞く一文と、国ごとのカードの決まりは、クレジットカードの英語をDo you take credit cards?の1文から並べた記事で読めます。↓

屋台の英語で持ち帰るか食べていくか|to goとtakeaway、eat inの落とし穴
注文のあとに飛んでくる二択が、持ち帰るか、ここで食べるかです。
2語の to go を引くと、語義は2個でした。
英英側は「If you ask for some food to go at a restaurant, you want it wrapped up so that you can take it away with you instead of eating it in the restaurant」です。
店で食べるのではなく、包んでもらって持っていく、という意味です。
例文の最後に Is that for here or to go? が載っていました。
For here or to go?
ここで食べますか、持ち帰りますか、という意味です。
ここで食べるなら For here, please. 、持ち帰るなら To go, please. と、聞かれた語をそのまま返します。
for here は引いても見出し語が無く、to go の例文の中にだけ出てきました。
英国の屋台では、同じ二択が別の語で来ます。
takeaway の語義は8個で、英英側に3個、ビジネス英語側に5個でした。
英英側の1個目は料理の話ではなく、「a main message or piece of information that you learn from something you hear or read」です。
話や文章から持ち帰る要点、という意味で、会議の takeaway のように使います。
料理の意味は2個目で、「a meal cooked and bought at a shop or restaurant but taken somewhere else, often home, to be eaten, or the shop or restaurant itself」でした。
持ち帰る料理そのものと、持ち帰りの店の両方を指す語です。
takeout も引くと語義は3個で、米語の辞典に入っているのは takeaway ではなく takeout のほうでした。
ビジネス英語側の takeout は「→ takeaway」と矢印1本で、takeaway を見よ、という扱いです。
ここで気をつけたいのが eat in です。
eat in の語義は1個だけで、「to have a meal at home rather than in a restaurant」でした。
eat in は家で食べるです。
日本語の「イートイン」につられて屋台で I’ll eat in. と言うと、辞書の語義のうえでは「家で食べます」という意味になります。
屋台の前のテーブルで食べるときに欲しくなるのが紙ナプキンで、napkin の語義は2個でした。
英英側の語義は「a small square piece of cloth or paper, used while you are eating to protect your clothes or to clean your mouth or fingers」です。
Can I have a napkin? と言えば、紙ナプキンを頼めます。
屋台の軽い食べ物を指す snack は語義4個で、英英側の1個目が「a small amount of food that is eaten between meals, or a very small meal」でした。
屋台の前のテーブルで食べるなら、聞かれた For here をそのまま返すのがいちばん外れません。
米国のtakeoutと英国のtakeawayが分かれる理由と、袋や税のルールは、持ち帰りの英語を米takeoutと英takeawayで並べ直した記事で読めます。↓

シンガポールの屋台の英語|ホーカーセンター123か所とトレー返却の決まり
語義の話はここまでにして、各国の役所が決めている屋台の決まりを見ます。
最初はシンガポールです。
シンガポールでは屋台を1か所に集めた建物を hawker centre と呼び、国の役所が管理しています。
管理しているのは国家環境庁(National Environment Agency、略して NEA)です。
NEA のホーカー管理のページは、ホーカーセンターを Bringing together well-loved local food under one roof と紹介しています。
愛されている地元の食べ物を1つの屋根の下に集めた場所、という意味です。
NEA が管理している市場とホーカーセンターは123か所です。
NEA はこの123か所について、テナントの契約と公衆衛生の面を取り締まっています。
同じページに、すべての人が affordable food in a clean and hygienic environment を楽しめる場所であり続けるように、という目的が並んでいます。
清潔で衛生的な環境で、手ごろな値段の食べ物、という意味です。
NEA のページは屋台の店主を hawker と呼び、支援のメニューには Support for Stallholders という見出しが並んでいます。
前の章で辞書の informally が付いていた hawker が、ここでは役所の公式な呼び名です。
ユネスコの無形文化遺産
シンガポールのホーカー文化は、ユネスコの無形文化遺産に2020年に登録されました。
登録名は Hawker culture in Singapore, community dining and culinary practices in a multicultural urban context です。
ユネスコのページは、ホーカーセンターを community dining rooms と呼んでいます。
さまざまな背景を持つ人が集まり、朝食・昼食・夕食をともにする「地域の食堂」という意味です。
同じページで、ホーカーセンターは street food culture から発展したものとされています。
中華系、マレー系、インド系などの文化が混ざった、多文化の都市国家の目印になっている、という位置づけです。
古くからの hawker には1960年代に商売を始めた人もいて、多くが1つの料理を専門にしています。
そのレシピと技は、家族の若い世代や弟子に受け継がれています。
屋台が路上から建物の中に移っても、英語の呼び名は hawker のまま残り、文化遺産の名前にまでなっています。
トレーを戻さないと警告と罰金
シンガポールの屋台で旅行者がいちばん気をつけたいのが、食べ終わったあとの片づけです。
NEA とシンガポール食品庁(SFA)は、テーブルを汚したままにする行為の取り締まりを強めています。
取り締まりはホーカーセンターで2021年9月1日から、コーヒーショップとフードコートで2022年1月1日から始まりました。
求められているのは、使ったトレーと食器を返却棚に戻し、テーブルのごみを片づけることです。
2023年6月1日からは、トレーを戻さなかった客に係員が身元の情報を求めるようになりました。
初めての違反は書面の警告、繰り返した人は罰金か裁判所への出頭です。
共同の発表では、初めての違反者に5,000件を超える書面の警告が出され、罰金の切符を切られた繰り返しの違反者は9人でした。
ホーカーセンターのトレーと食器の返却率は、取り締まり前の65パーセントから93パーセントに上がっています。
体の弱いお年寄り、障害のある人、子どもなど、自分で片づけられない人は取り締まりの対象になりません。
その場合は、一緒にいる家族や連れが片づけを手伝うことになっています。
返却棚の場所が分からないときは、近くの人にこう聞きます。
Where do I return the tray?
トレーはどこに返せばいいですか、という意味です。
英語の発表では、返却を return、トレーと食器を trays and crockery、テーブルのごみを table litter と呼んでいます。
ニューヨークと英国の屋台の英語|許可証・A評価・1,000ポンドの罰金
米国と英国では、屋台の決まりは「誰が売っていいか」という許可の形で出てきます。
辞書の street vendor に sometimes illegally と付いていたのは、この許可を持たずに売る人がいるからです。
ニューヨークの屋台に貼られたA・B・C
ニューヨーク市保健局は、屋台の食べ物の売り手を mobile food vendor と呼んでいます。
定義は、公共・私有・制限区域のどこであれ、mobile food vending unit から食べ物を売るか無料で配る人です。
mobile food vending unit は、食べ物を保管・調理・陳列・提供する cart か truck で、食べるのはその車の外という前提です。
売り手には food vendor license か supervisory license が要り、車のほうには permit が要ります。
人には license、車には permit と、2つの許可が別々に要る仕組みです。
cart や truck で働くには、mobile food vendor license を取り、Food Protection Course for Mobile Vendors という講習を修了する必要があります。
permit の数は法律で上限が決まっていて、通年の permit は2年間有効です。
季節の permit は、毎年4月1日から10月31日までの売り場に使えます。
Green cart permit という種類もあり、こちらで売れるのは果物、野菜、味付けしていないナッツ、水に限られます。
旅行者の目に入るのは、車に貼られた letter grade です。
衛生検査の点数が0点から13点ならA、14点から27点ならB、28点以上ならCです。
減点方式なので、点数が少ないほど評価が上になります。
この letter grade は、車の permit のステッカーに表示されます。
ニューヨークの屋台の車に貼られたAの文字は、店の人気ではなく衛生検査の結果です。
英国のstreet trading licence
英国政府 GOV.UK には、イングランドとウェールズの street trading licence のページがあります。
路上で物を売るには、地域の council(地方自治体)から許可が要る場合があります。
申し込むときは、売りたい場所と日時を council に伝えます。
写真2枚と手数料が求められる場合があり、council は許可を断ることも、申し込みより少ない日数と時間で出すこともできます。
順番待ちの名簿がある場合もあります。
pedlar’s certificate(行商人の証明書)を持っていれば、street trading licence が要らない場合もあります。
許可の条件を守らなければ停止か取り消し、または最大1,000ポンドの罰金で、許可なしで売った場合も最大1,000ポンドの罰金です。
場所と日時ごとに許可を受ける英国の仕組みは、辞書の pitch の「いつも物を売る持ち場」という語義と重なります。
市場の屋台で値段の交渉をしてよい場面と、各国の価格表示の決まりは、値切る英語をCan you do any better?の1文にまとめた記事で読めます。↓

福岡の屋台を英語で案内する|福岡市屋台基本条例が決めている線引き
日本の屋台を海外の友人に英語で案内するときに、いちばん具体的な決まりがあるのが福岡市です。
福岡市には、屋台だけを対象にした福岡市屋台基本条例があります。
条例の目的は、屋台が福岡のまちににぎわいや交流の場を生み、観光資源にもなっていることをふまえて、適正な屋台営業を確保することです。
条例でいう屋台は、軽車両に飲食店営業の設備を備え付けたものです。
英語で言えば、車輪の付いた台という点で cart に近く、その場で調理して出す点で food cart にあたります。
市道で屋台を営むには、道路の占用許可、道路の使用許可、飲食店営業許可の3つが要ります。
公園で営む場合は、公園の占用等の許可と飲食店営業許可の2つです。
| 決まり | 条例の中身 |
|---|---|
| 歩道の幅 | 屋台を置いたあとも有効幅員2メートル以上 |
| 点字ブロック | 屋台をブロックから0.6メートル以上離す |
| 占用許可の期間 | 市道は1年以内、公園は6か月以内 |
| 公募で選ばれた営業者 | 通算3年まで、延長は2回(1回目2年以内・2回目5年以内) |
| 許可の表示 | 道路占用許可証を屋台の見やすい場所に掲示 |
市道の屋台は、許可を受けた本人が自分で営まなければならず、許可を他人に譲ったり貸したりできません。
屋台営業者と従事者は、市が開く講習会を受けることが義務になっています。
条例には客の側の責務もあり、屋台のある場所の住民の生活環境に配慮して利用するよう努めることになっています。
英語で友人に伝えるなら、短く言えば足ります。
Each yatai needs permits from the city, and we should keep it quiet for the neighbors.
屋台はどこも市の許可を受けていて、近所の人のために静かにしよう、という意味です。
屋台そのものは、英語の会話でも yatai のまま使い、最初に一度だけ food stall と言い添えると通じます。
英語には屋台にぴたりと重なる1語が無いので、日本語の名前に説明を添える形がいちばん外れません。
屋台の英語についてよくある質問
屋台は英語でyataiと言っても通じますか?
相手が日本の屋台を知っていれば通じますが、初めての相手には説明を添えます。
yatai は Cambridge Dictionary で引く対象にしていないので、辞書の語義の数は書けません。
最初に a yatai, a small food stall のように英語を1つ並べると、そのあとは yatai だけで話が進みます。
stallとstandはどちらを使えばいいですか?
相手のいる国に合わせます。
stall の語義17個のうち米語側の4個には物を売る台の意味が入っておらず、stand の米語側には「a small structure where food, newspapers, candy, and other small items are sold」が入っています。
英国や市場なら stall、米国の食べ物の屋台なら stand が、辞書の語義の並びに合います。
Cash onlyの屋台でカードしか持っていないときはどうすればいいですか?
その屋台では払えないので、注文の前に近くのATMを探します。
cash only の語義は「you can only make with cash, and not by cheque, bank card, etc.」で、カードは使えないという意味です。
Is there an ATM near here? と聞けば、近くの現金の引き出し機の場所を教えてもらえます。
シンガポールのホーカーセンターで食べ終わったらトレーはどうしますか?
返却棚に戻し、テーブルのごみも片づけます。
NEA と SFA の取り締まりでは、戻さなかった客は初めてなら書面の警告、繰り返すと罰金か裁判所への出頭です。
体の弱いお年寄りや子どもなど自分で片づけられない人は対象外で、一緒にいる家族や連れが手伝うことになっています。
ニューヨークの屋台の車に貼ってあるAの文字は何ですか?
衛生検査の結果をあらわす letter grade です。
ニューヨーク市保健局の決まりでは、検査の点数が0点から13点ならA、14点から27点ならB、28点以上ならCです。
点数は減点の合計なので、Aがいちばん減点の少ない評価です。
覚えて帰る1文|屋台の英語を決めるのは単語ではなく指さし
最後に、屋台で使う一文をもう一度置きます。
One of these, please.
この一文には stall も stand も vendor も入っていません。
入っているのは、目の前の物を指す these と、数の One だけです。
屋台を指す英語は、stall が17個、stand が49個、booth が7個と、どれも屋台以外の意味を大量に抱えていました。
屋台の前で口が止まる原因は、語彙の量ではありません。
どの語で屋台を呼ぶかを選ぼうとすることが原因です。
だから屋台の前では呼び名を選ばず、指さしと数で組み立てます。
場面で選ぶ6語の早見
- 屋台を探す:street food(語義1個)
- 英国の市場の屋台:stall(語義17個)
- 米国の食べ物の屋台:stand(語義49個)、food cart(語義2個)
- 串焼きを頼む:skewer(語義5個)
- 辛さを控える:mild(語義8個)
- 持ち帰る:to go(語義2個)、英国では takeaway(語義8個)
シンガポールではトレーを返し、ニューヨークの屋台は車のAの文字を見て、英国では council の許可を受けた屋台で買います。
屋台で食べられない食材を伝える一文も、出かける前に1つ持っておくと安心です。
あわせて読みたいのは、アレルギーの英語を店で言う一文に組み直した記事です。↓

参考文献
- stall(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- stand(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- booth(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- kiosk(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- cart(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- food cart(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- barrow(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- vendor(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- street vendor(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- hawker(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- trader(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- stallholder(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- pitch(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- street food(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- food truck(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- food court(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- market(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- queue(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- skewer(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- stick(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- spicy(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- hot(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- mild(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- cash(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- cash only(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- contactless(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- change(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- receipt(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- to go(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- takeaway(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- takeout(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- eat in(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- napkin(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- snack(Cambridge Dictionary 公式サイト)
- Hawker Management Overview(シンガポール国家環境庁 NEA 公式サイト)
- Cleaner Tables In Hawker Centres And Coffeeshops(シンガポール国家環境庁 NEA・シンガポール食品庁 SFA 共同発表)
- Hawker culture in Singapore, community dining and culinary practices in a multicultural urban context(ユネスコ 無形文化遺産 公式サイト)
- Mobile Food Vendors – NYC Health(ニューヨーク市保健局 公式サイト)
- Street trading licence (England and Wales)(英国政府 GOV.UK 公式サイト)
- 福岡市屋台基本条例(福岡市 例規集 公式サイト)
Comments