食事が終わって、細長い紙が黒い革のホルダーに挟まれて運ばれてきます。
開いてみると、料理の名前の下に、見慣れない行がいくつも並んでいます。
service charge と書いてある行があり、その下に gratuity と書かれた空欄があります。
両方に払ったら二重払いになるのか、それともこれは同じものなのか、伝票を見ているだけでは分かりません。
この瞬間に必要なのが「チップは含まれていますか」という質問の英語です。
ところが、多くの日本人はここで tip という単語を使おうとして、逆に話が長くなります。
この記事では、tip と gratuity という二つの単語の語源と語義を辞書で引き直しました。
そのうえで、アメリカ労働省(U.S. Department of Labor)の公式ページを実際に開き、service charge とチップが法律上どう区別されているかを確かめています。
扱うのは「聞き方の英語」と「伝票の行の読み方」だけです。
いくら置くべきかという相場の話は、国と店と時代で動くので、この記事では一切扱いません。
「チップは含まれていますか」の英語は “Is service included?” の一文で足ります|先に結論
伝票を指さしながら、これを言えば終わります。
Is service included?
サービス料は含まれていますか、という一文です。
tip ではなく service という単語を選ぶのが、この質問のいちばんの要点です。
理由は単純で、伝票に印刷されている行の名前が service charge や gratuity であって、tip ではないからです。
相手は伝票の行の話として受け取るので、答えも一言で返ってきます。
もう少していねいに言いたいときは、こちらです。
Excuse me, is the service charge already included in the total?
すみません、サービス料はもう合計に入っていますか、という一文です。
伝票の空欄を指さして確認したいときは、こう聞きます。
What is this line for?
この行は何のためのものですか、という一文です。
| 聞きたいこと | 言う英語 | 意味 |
|---|---|---|
| いちばん短く | Is service included? | サービス料は入っていますか |
| ていねいに | Is the service charge already included in the total? | 合計にもう入っていますか |
| 行を指して | What is this line for? | この行は何ですか |
| 合計を確かめる | Is this the final total? | これが最終の合計ですか |
| 追加が要るか | Do I need to add anything? | 何か足す必要はありますか |
なぜ「チップは含まれていますか」の英語で tip を使うと話が長くなるのか
Is the tip included? と聞いても、意味は通じます。
ただ、この聞き方には二つの引っかかりがあります。
一つめは、伝票の上に tip という印刷がないことが多い点です。
印刷されているのは service charge、gratuity、あるいは suggested gratuity といった言葉で、tip という語はむしろ手書きの欄の外にあります。
相手は伝票を見ながら答えるので、伝票に書いてある単語で聞いたほうが答えが速く返ってきます。
二つめは、tip という単語が法律上の区分と一致していない点です。
後ろの見出しで見るとおり、強制的に加算される service charge は、アメリカの労働法の上では tip として扱われません。
つまり「tip は含まれていますか」という問いは、店の側から見ると答えにくい形をしています。
聞きたいのは「もう払ったことになっているのか」なので、行の名前で聞くのが最短です。
tip という英語は、鉛筆の先端の tip とは別の単語でした
英語版Wiktionaryの tip の項を開くと、見出しが五つに分かれています。
語源が別々なので、同じ綴りでも別の単語として並べられているのです。
Etymology 1 は、とがったものの先端という意味の tip です。
鉛筆の先や指先を指す、あの tip がここにあたります。
Etymology 2 は、傾ける・ひっくり返すという意味の tip です。
イギリス英語でごみ捨て場を tip と呼ぶのも、この系統です。
Etymology 3 は、軽く叩くという意味の tip です。
そして Etymology 4 に、ようやくお金の tip が出てきます。
A gratuity; a small amount of money left for a bartender, waiter, taxi driver or other service worker as a token of appreciation.
感謝のしるしとして、バーテンダー・ウェイター・タクシー運転手その他のサービス業の人に残される少額のお金、という語義です。
動詞の語義は、サービスを提供する人の従業員に少額の gratuity を与えること、とされています。
辞書は tip を説明するのに gratuity という単語を使っていて、この二語は語義の上で直結しています。
語源については、もともと盗人の隠語(thieves’ slang)で由来ははっきりせず、OEDによればおそらく Etymology 1 の語義と関係がある、と書かれています。
Etymology 5 は、内々の情報や助言という意味の tip です。
日本語で「役に立つ豆知識」を指して使うチップスは、この五番目の系統から来ています。
お金のチップと情報のチップは、英語では別の見出しに置かれている別の単語だということです。
出典=Wiktionary|tip(2026年9月16日取得)
gratuity という英語の二番目の語義が、伝票の正体を教えてくれます
伝票でいちばんよく見るのが gratuity という単語です。
Wiktionaryの gratuity の項によると、語源は中期フランス語の gratuité、あるいは中世ラテン語の gratuitas にさかのぼります。
その gratuitas は「a free gift」、つまり無償の贈り物という意味でした。
さらにさかのぼるとラテン語の gratuitus、すなわち「freely given, free」=自由に与えられた、無料の、という語に行き着きます。
語義の一番目は、素直にこの語源どおりです。
An additional payment given freely as thanks for service.
サービスへの感謝として自由に与えられる追加の支払い、という語義です。
問題は二番目です。
Euphemistic form of fee, in contexts where such additional payments have been made obligatory.
そうした追加の支払いが義務化された文脈における、fee の婉曲表現、という語義です。
辞書は、強制されている gratuity は「贈り物」ではなく「手数料の言い換え」だとはっきり書いています。
この語義の同義語として並べられているのが、まさに service charge です。
三番目の語義に至っては、賄賂の婉曲表現とまで書かれています。
だから伝票に gratuity とあったとき、まず見るべきは「その額が自分で決められるか、すでに数字が入っているか」です。
空欄なら一番目の語義、金額が印字されていれば二番目の語義に近い、という読み方ができます。
出典=Wiktionary|gratuity(2026年9月16日取得)
service charge はチップではありません|米労働省が公式にそう書いています
辞書の読みを、法律の側からも確かめます。
アメリカ労働省賃金時間局のファクトシート15番、チップを受け取る労働者についての公式ページには、次の一文があります。
A compulsory charge for service, for example, 15 percent of the bill, is not considered a tip under the FLSA.
サービスに対する強制的な料金、たとえば伝票の15パーセントは、公正労働基準法(FLSA)の上ではチップとみなされない、という一文です。
強制で加算される service charge は、法律上チップではない、と政府の公式ページに書かれています。
同じページによると、service charge は使用者の最低賃金や時間外賃金の義務を満たすために使うことができ、時間外賃金を計算するときの通常賃金率に含めなければならない、とされています。
つまり service charge は、法律の目から見ると「店の売上として入ってくるお金」に近い扱いです。
いっぽうチップは、客が自由に渡すお金であり、扱いが別の条文で決まっています。
この違いが、伝票の上では service charge と gratuity という二つの行になって現れます。
出典=U.S. Department of Labor|Fact Sheet #15: Tipped Employees Under the FLSA(2026年9月16日取得)
| 伝票の行 | 意味 | 読み方 |
|---|---|---|
| service charge | サービスに対する料金 | 強制なら法律上チップではない |
| gratuity | 感謝としての追加の支払い | 空欄なら自分で決める欄 |
| suggested gratuity | 目安として示された額 | 提案であって請求ではない |
| auto gratuity | 自動で加算された額 | すでに合計に入っている |
| tip | 客が自由に渡すお金 | 伝票に印刷されないことも多い |
伝票にこの行があったら「チップは含まれていますか」と聞く必要はありません
質問する前に、伝票を三秒だけ見てください。
次の言葉が印字されていて、その横にすでに金額が入っているなら、それは合計に組み込まれているという意味です。
service charge included、gratuity included、service compris といった表記がそれにあたります。
included という一語が付いているかどうかが、いちばん分かりやすい目印になります。
included と書いてある行を見つけたら、その伝票については質問そのものが不要です。
逆に、gratuity の横が点線の空欄になっていて、その下に total の空欄がもう一つあるなら、そこは自分で書く欄です。
カードの伝票で二枚出てくる場合、片方は merchant copy(店の控え)、もう片方は customer copy(客の控え)です。
金額を書き込むのは merchant copy のほうで、customer copy は自分が持ち帰る紙です。
どちらか分からなくなったら、紙を両方持ち上げて次のように聞けば済みます。
Which one do I keep?
どちらを持ち帰ればいいですか、という一文です。
伝票の英語を上から順に読む|subtotal から total までの並び
伝票は、たいてい同じ順番で並んでいます。
順番を覚えてしまえば、知らない単語が一つ混ざっていても位置から意味が推測できます。
| 順番 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | item / description | 注文した品目 |
| 2 | qty | 数量(quantityの略) |
| 3 | subtotal | 税やサービス料を足す前の小計 |
| 4 | tax / VAT / GST | 税。国によって呼び名が変わる |
| 5 | service charge | サービス料 |
| 6 | gratuity | 感謝としての追加の支払い |
| 7 | total | 合計 |
| 8 | amount due | 支払うべき額 |
| 9 | balance | 残額 |
| 10 | server / table | 担当者名・テーブル番号 |
subtotal と total のあいだに何行あるかを見るだけで、何が上乗せされたのかが分かります。
この二つの数字の差が税だけなのか、サービス料も入っているのかを確かめるのが、伝票を読むという作業の中身です。
差額の内訳が読み取れないときは、こう聞きます。
Could you explain the difference between the subtotal and the total?
小計と合計の差について説明してもらえますか、という一文です。
Could I get an itemized bill?
明細の入った伝票をもらえますか、という一文です。
アメリカでは伝票を check、イギリスでは bill と呼ぶことが多いので、通じにくければ片方を言い換えてみてください。
「チップは含まれていますか」と聞いたあとに返ってくる英語
質問を出せば、答えが返ってきます。
返事のパターンは多くないので、先に並べておけば聞き取れます。
| 相手が言ってくる英語 | 意味 | そのあとどうするか |
|---|---|---|
| Yes, it’s included. | はい、含まれています | 合計を払えば終わり |
| No, it’s not included. | いいえ、含まれていません | gratuity の欄を自分で書く |
| It’s up to you. | お任せします | 自分で決めてよい |
| We add 15 percent for parties of six or more. | 6名以上は15パーセント加算します | すでに入っている |
| The service charge is already on the bill. | サービス料はもう伝票に入っています | 追加は不要 |
| Whatever you like. | お好きなように | 自分で決めてよい |
| Just the total, please. | 合計だけで大丈夫です | そのまま払う |
聞き取れなかったときは、黙らずに次を出します。
Sorry, so is it included or not?
すみません、つまり含まれているのですか、いないのですか、という一文です。
二択に戻す聞き方は、長い説明を一語で終わらせてくれます。
Could you point to the line on the bill?
伝票のどの行か指してもらえますか、という一文です。
指で示してもらえれば、聞き取りの勝負が読み取りの勝負に変わります。
tip credit と tip pool|そのお金がどこへ行くかの英語
なぜ店がこの区別にこだわるのか、労働省のページを読むと背景が見えてきます。
アメリカ労働省の Tipped Minimum Wage のページによると、連邦法上のチップ受取労働者の現金最低賃金は時給2.13ドルです。
使用者が賃金に充当できるチップの上限(maximum tip credit)は5.12ドルとされています。
この二つを足すと、連邦最低賃金の7.25ドルになります。
また、チップ受取労働者の定義は、月に30ドルを超えるチップを習慣的かつ定期的に受け取る労働者だとされています。
客が置いたチップが、そのまま賃金の一部として計算に組み込まれる仕組みがある、ということです。
出典=U.S. Department of Labor|Minimum Wages for Tipped Employees(2026年9月16日取得)
もう一つ、伝票を読むうえで知っておくとよいのが tip pool という言葉です。
ファクトシート15番には、tip credit を取る使用者は、習慣的かつ定期的にチップを受け取る職種の従業員だけに限られたチップ・プールへの拠出を求めることができる、と書かれています。
いっぽう、使用者が現金賃金として連邦最低賃金の7.25ドル以上を支払っている場合には、チップを受け取る職種でない従業員も含む強制的なチップ・プールを設けることができる、ともあります。
そして、そこには明確な線が引かれています。
An employer may not receive tips from such a tip pool and may not allow managers and supervisors to receive tips from the pool.
使用者はそのチップ・プールからチップを受け取ってはならず、管理職や監督者がプールからチップを受け取ることを認めてもならない、という一文です。
チップは働いている人のもので、経営側が取ってはいけない、と条文の側が書いています。
この線があるからこそ、service charge と gratuity は伝票の上で別の行に分けられているわけです。
「チップは含まれていますか」の英語でやってはいけない聞き方
一つめは、伝票を見ずに口頭だけで聞くことです。
included という単語が印字されていれば、質問そのものが要りません。
二つめは、Is the tip included? だけで押し通すことです。
伝票の行の名前は service charge や gratuity なので、その言葉で聞いたほうが答えが速く返ってきます。
三つめは、service charge と gratuity を同じものとして扱うことです。
労働省のファクトシートが、強制的なサービス料はFLSA上チップではないとはっきり書いています。
四つめは、gratuity の欄に金額が印字されているのに、さらに自分で書き足してしまうことです。
auto gratuity と書かれている行は、すでに加算されているという意味です。
五つめは、金額の話に踏み込んで長く交渉しようとすることです。
この記事で扱っているのは「含まれているかどうか」の確認だけで、いくら置くかは別の判断になります。
六つめは、カードの控えを二枚とも置いて帰ってしまうことです。
Which one do I keep? の一文を出せば、持ち帰るべき紙を渡してもらえます。
「チップは含まれていますか」の英語のよくある質問
service charge と gratuity は結局どう違うのですか
辞書の上では、gratuity は本来「自由に与えられる追加の支払い」で、service charge はそれが義務化されたときの言い換えにあたる、とされています。
アメリカ労働省のファクトシートでは、強制的なサービス料はFLSA上チップとみなされない、と明記されています。
Is service included? と Is the tip included? はどちらが通じますか
どちらも意味は通じます。
ただ伝票に印字されているのは service charge や gratuity なので、その語で聞いたほうが相手は伝票を指しながら答えやすくなります。
伝票に auto gratuity と書いてあったらどうすればいいですか
すでに加算されているという意味なので、合計を確かめてから払えば大丈夫です。
確信が持てないときは Is this the final total? と聞けば、一言で答えが返ってきます。
check と bill はどちらを使えばいいですか
アメリカでは check、イギリスでは bill と呼ばれることが多い単語です。
通じにくければ、もう片方に言い換えるか、伝票そのものを指させば伝わります。
チップは誰の手に渡るのですか
アメリカ労働省のファクトシート15番には、使用者はチップ・プールからチップを受け取ってはならず、管理職や監督者が受け取ることも認めてはならない、と書かれています。
配分の実務は店ごとに違うので、この条文が示しているのは「経営側は取れない」という線だけです。
「チップは含まれていますか」の英語は Is service included? だけ覚えて帰ってください
語源をたどると、gratuity は「無償の贈り物」から来た言葉でした。
ところが辞書の二番目の語義は、それが義務化された文脈での fee の婉曲表現だと書いています。
そして労働省は、強制的なサービス料はチップではないと条文で切り分けています。
この二つを知っていれば、伝票の行は迷わず読めます。
Is service included?
まず伝票の included を探し、無ければこの一文を出す。
それだけで、黒い革のホルダーの前で固まる時間はなくなります。
伝票の英語は、計算する力ではなく、行の名前を知っているかどうかの勝負です。
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