食事が終わって、あとは払って帰るだけ。
その最後の1分が、いちばん気まずいという人は少なくありません。
日本なら伝票を持ってレジへ行けば終わりますが、海外では伝票が来ないまま時間だけが過ぎることがあります。
お会計でつまずく原因は、英語が出てこないことより、「どこで、いつ、誰に言うのか」が国によって違うことにあります。
席で頼む国もあれば、レジへ行く国もあります。
チップが要る国もあれば、サービス料が最初から入っている国もあります。
しかも、同じ「お会計」を指す語が、英語の中で2つに割れています。
この記事では、Longman Dictionary of Contemporary English(ロングマン現代英英辞典)のオンライン版で、会計まわりの語を1語ずつ引き直しました。
bill・check・tip・gratuity・service charge・receipt・change の7語です。
bill には名詞の語義が11個、check には10個あり、合わせて21個のうち「レストランの勘定書き」を指すのはそれぞれ1個ずつでした。しかも、その1個には別々の国の印がついていました。
さらに、チップが誰のものかについては、アメリカ合衆国労働省のページを実際に開いて確かめています。
以下、食べ終わってから店を出るまでを、順番どおりに組み直します。
お会計の英語は「Could we get the bill, please?」の1文で足ります|先に結論
覚えるのは、この1文です。
Could we get the bill, please?
「お会計をお願いします」という意味です。
読み方は「クッジュイ ゲッ ザ ビル、プリーズ」で通じます。
アメリカ側の店なら、bill のところを check に入れ替えるだけです。
Could we get the check, please?
1人で食べているときは we を I に変えます。
もっと短くしたいなら、この形でも成立します。
The bill, please.
この3語でも、店員さんはすぐに伝票を取りに行ってくれます。
言うタイミングは、食べ終わって、店員さんと目が合ったときです。
海外の店では、頼まないかぎり伝票が出てこないことがあるので、待っていても状況は動きません。
「そろそろ払いたい」と伝えるのは、せかしている行為ではなく、ふつうの合図です。
お会計の英語がbillとcheckに割れる理由|辞書で語義21個を数えました
なぜ2つの語があるのかは、辞書を引くとはっきりします。
ロングマンで bill を引くと、名詞の語義は11個です。
そのうち2番目に、イギリス英語の印つきで a list showing how much you have to pay for food you have eaten in a restaurant(レストランで食べたものの支払額を示した一覧)と書かれています。
そして、辞書はこの語のアメリカ側の言い方として check を挙げています。
では check を引くとどうなるか。
名詞の語義は10個あり、7番目にアメリカ英語の印つきで a list that you are given in a restaurant showing what you have eaten and how much you must pay(レストランで渡される、食べたものと支払額を示した一覧)とあります。
同じものを指す語が、イギリス側では bill、アメリカ側では check として、別々の辞書項目に分かれて載っているということです。
| 語 | 語義の数(名詞) | レストランの勘定書きの位置 | 国の印 |
|---|---|---|---|
| bill | 11個 | 2番目 | イギリス英語 |
| check | 10個 | 7番目 | アメリカ英語 |
ここからが厄介なところです。
bill の4番目には、アメリカ英語の印つきで a piece of paper money(紙のお金、つまりお札)という語義があります。
check の6番目には、アメリカ英語の印つきで the American spelling of cheque(小切手のアメリカ式のつづり)という語義があります。
つまりアメリカでは、bill と言えばお札、check と言えば小切手という別の意味が同時に走っています。だからレストランでは check のほうが誤解されにくいのです。
迷ったら、どちらの語も使わずに済ませる方法があります。
Excuse me, we’re ready to pay.
「すみません、支払いをお願いします」です。
この言い方なら、bill か check かを考えずに済みます。
出典=Longman|bill/Longman|check(2026年9月16日取得)
お会計の英語を言う前に|席で払う店とレジで払う店を見分ける
言葉より先に、その店がどちらの型かを見分けます。
席で払う型では、頼むと伝票がテーブルに置かれ、そこにお金かカードを置きます。
店員さんが持って行き、少ししてから戻ってきます。
レジで払う型では、入口近くのレジまで自分で行きます。
見分け方は簡単で、まわりのテーブルの人が立ち上がってどこへ向かうかを見るだけです。
分からなければ、そのまま聞いてしまいます。
Do I pay here or at the counter?
「ここで払いますか、それともカウンターですか」です。
この1文は、聞いても失礼になりません。
座ったまま待ち続けるより、5秒で聞いたほうが早く帰れます。
お会計の英語|支払い方法を聞かれたときの答え方
伝票が来たあと、支払い方法を聞かれます。
Cash or card?
「現金ですか、カードですか」です。
答えは1語で終わります。
| 言う英語 | 意味 |
|---|---|
| Card, please. | カードでお願いします |
| Cash, please. | 現金でお願いします |
| Can I pay by card? | カードで払えますか |
| Do you take cards? | カードは使えますか |
| Is there a minimum for card? | カードの最低利用額はありますか |
カードを機械にかざすとき、店員さんがこう言うことがあります。
Just tap.
「かざすだけでいいですよ」という意味です。差し込まずに、カードを機械の上に軽く当てます。
暗証番号を求められたときは、こう言われます。
Enter your PIN, please.
画面を自分のほうへ向けてほしいときは、この一言で伝わります。
Could you turn the screen to me, please?
カードの端末には、支払いの直前にチップの選択画面が出る国があります。画面を見ないままボタンを押すと、意図しない金額が加わることがあります。
割り勘のお会計英語|separate checksとsplit the billの言い分け
複数人で食べたときは、先に伝えておくほど話が早く終わります。
別々の伝票にしてほしいときは、注文のときに言っておきます。
Could we have separate checks, please?
「伝票を別々にしてもらえますか」です。
イギリス側の言い方なら、こうなります。
Could we split the bill, please?
合計を人数で割ってほしいときは、人数を足します。
Could we split it three ways?
「3等分にできますか」です。three の部分を人数に変えるだけで使えます。
逆に、自分がまとめて払いたいときはこの1文です。
It’s on me tonight.
「今夜は私が払います」です。
ただし、席についてから割り勘を頼むと断られる店もあります。頼むなら注文のときが確実です。
お会計の英語で最後に迷うチップ|tipとgratuityの語義を辞書で引きました
日本にはない習慣なので、ここでいちばん手が止まります。
ロングマンで tip を引くと、名詞の語義は複数並び、そのうちお金の意味は a small amount of additional money that you give to someone such as a waiter or a taxi driver(ウェイターやタクシーの運転手などに渡す、少額の追加のお金)です。
辞書の例文は I gave the guy a big tip.(その人に多めのチップを渡した)です。
1番目の語義は the end of something, especially something pointed(何かの先端)で、鉛筆の先や鼻の先を指す語でもあります。
同じ辞書には、助言という意味の tip も載っています。旅行記事で見かける「tips」は、この助言のほうです。お金の tip と混ざりやすい語です。
改まった言い方が gratuity です。
ロングマンでは語義が2個で、1番目が formal の印つきで a small gift of money given to someone for a service they provided(受けたサービスに対して渡す、少額の金銭)とあり、tip と同義だと示されています。
2番目は、退職時に渡されるまとまった金銭という意味で、こちらはレストランとは関係がありません。
辞書が載せている例文のひとつが、Is a gratuity automatically added to the bill?(チップは自動で伝票に加算されますか)です。
この例文は、そのまま店で使えます。自動で加算されているかどうかを確かめるのが、二重に払わないための唯一の方法です。
Is a gratuity included?
チップの相場は国と店で大きく違い、この記事では確かめられていない数字は書きません。行き先の相場は、その国の案内で確認してください。
出典=Longman|tip/Longman|gratuity(2026年9月16日取得)
お会計の紙に service charge とあったら|辞書の語義を読むと払う相手が分かります
伝票の下のほうに、料理の合計とは別の行が入っていることがあります。
その代表が service charge です。
ロングマンで service charge を引くと、イギリス英語のレストランの意味として an amount of money that is added to a bill in a restaurant as an extra charge for the service of the waiters(ウェイターのサービスに対する追加分として、レストランの伝票に加えられる金額)と書かれています。
同じ項目には、集合住宅の管理費という意味や、予約手数料という意味も並んでいます。
辞書が載せている例文のひとつが、No tipping is allowed, but there is an 18-percent service charge.(チップは受け取らないが、18パーセントのサービス料がつく)です。
つまり、サービス料が入っている店では、チップを別に置く必要がないことがあります。伝票の行を読まずに現金を置くと、二重になります。
伝票で見るべき行は3つです。
| 伝票の表記 | 意味 | どうするか |
|---|---|---|
| Subtotal | 料理と飲み物の合計 | 注文したものと合っているか見る |
| Service charge / Gratuity | サービス料・チップの自動加算 | 入っていれば追加は不要なことが多い |
| Tax / VAT / GST | 税 | 国ごとに名前が違うだけ |
| Total | 支払う金額 | ここを見て払う |
読んでも分からない行があったら、そのまま指さして聞けます。
Excuse me, what is this charge for?
「この項目は何の料金ですか」です。責める調子にならず、事実だけを確かめられます。
出典=Longman|service charge(2026年9月16日取得)
お会計のチップは誰のものか|アメリカ合衆国労働省のページを開いて確かめました
チップを渡すとき、これは本当に店員さんの手に渡るのだろうかと迷ったことはありませんか。
アメリカについては、労働省(U.S. Department of Labor)の賃金時間局が公開しているページを開いて確かめました。
そこにはこう書かれています。
an employer cannot keep employees’ tips under any circumstances; managers and supervisors also may not keep tips received by employees, including through tip pools
「雇い主はいかなる場合も従業員のチップを自分のものにできない。管理者や監督者も、チップの分配の仕組みを通じてであっても、従業員が受け取ったチップを自分のものにできない」という意味です。
つまりアメリカでは、置いたチップは働いている人のものだと、労働省が明文で示しているということです。
同じページには、雇い主が最低賃金の計算にチップの一部を算入できる仕組み(tip credit)があることも書かれています。
具体的な金額については、このページに数字の記載を見つけられなかったので、ここでは書きません。
なお、これはアメリカの制度の話です。
チップの扱いは国ごとにまったく違うので、他の国に当てはめないでください。
出典=U.S. Department of Labor|Wage and Hour Division|Tips(2026年9月16日取得)
お会計のあとの英語|receiptとchangeの語義を知っておくと止まりません
支払いが済むと、あと2つだけやりとりがあります。
1つ目がレシートです。
ロングマンで receipt を引くと語義は3個で、1番目が a piece of paper that you are given which shows that you have paid for something(何かの支払いを済ませたことを示す紙)です。
辞書の例文は Keep your receipt in case you want to bring it back.(返品するかもしれないので、レシートは取っておきなさい)です。
2番目は「受け取ること」という抽象的な意味、3番目は複数形で「収入」という意味です。
レジで聞かれるのはこの1文です。
Would you like a receipt?
ほしいときは Yes, please.、要らないときは No, thank you. で終わります。
2つ目がおつりです。
ロングマンで change を引くと名詞の語義は8個で、お金に関するものは the money that you get back when you have paid for something with more money than it costs(値段より多く払ったときに戻ってくるお金)、money in the form of coins(硬貨の形のお金)などです。
おつりは要らないと伝えるときの言い方が、これです。
Keep the change.
「おつりは取っておいてください」です。チップを渡す代わりに使われる言い方でもあります。
逆に、細かいお金に替えてほしいときはこう言えます。
Could I get some change, please?
出典=Longman|receipt/Longman|change(2026年9月16日取得)
お会計の英語でやらないほうがいい3つの言い方
通じるかどうかとは別に、場が固くなる形があります。
1つ目は、How much? と単独で言うことです。
意味は通じますが、値段を問い詰める響きになることがあります。
同じことを聞くなら How much is it altogether?(全部でいくらですか)のほうが穏やかです。
2つ目は、伝票の中身を見ないまま払うことです。
サービス料が入っているかどうかは、行を読まないと分かりません。
読まずに現金を置くと、加算とチップが重なることがあります。
3つ目は、金額が違うと感じたときに強い言葉を使うことです。
数え間違いは起こります。そのときに使う1文を決めておけば、感情を出さずに済みます。
Could you check this again, please?
「もう一度ご確認いただけますか」です。相手を責めずに、確認だけを頼めます。
お会計の英語|よくある質問
伝票がなかなか来ないときは、どうしますか
目が合った瞬間に、片手で書くしぐさをすると通じる国があります。
それでも来なければ、席を立って声をかけてしまいます。
Sorry, could we pay now? We’re in a bit of a hurry.
急いでいると添えると、順番を前に回してもらいやすくなります。
カードが使えないと言われたら、何と言いますか
別の支払い方法を提案する形が早いです。
Can I pay in cash instead?
現金が足りないときは、近くの現金自動預払機を聞きます。
Is there an ATM nearby?
チップの選択画面が出たら、どう答えますか
画面には、いくつかの割合のボタンと、金額を自分で入れるボタンが並びます。
サービス料がすでに入っているかどうかを、先に聞いておくのが確実です。
Is service already included?
「サービス料はもう入っていますか」です。入っていれば、そこで判断ができます。
領収書がほしいときは、何と言いますか
レシートとは別に、宛名の入った紙がほしいときがあります。
Could I have an itemized receipt, please?
「明細の入ったレシートをいただけますか」です。
「ごちそうさま」にあたる英語はありますか
そのまま置き換わる言葉はありませんが、店を出るときの一言は決まっています。
Thank you. It was delicious.
この2文を言って出ると、支払いの気まずさがきれいに消えます。
お会計の英語は、この1文だけ覚えて帰ってください
辞書を7語ぶん引き直して分かったのは、お会計の語がいちばん国によって割れているということでした。
bill は11個の語義のうち2番目がイギリスの勘定書きで、4番目がアメリカのお札でした。
check は10個の語義のうち7番目がアメリカの勘定書きで、6番目が小切手でした。
同じ場面を指す語が、国をまたぐだけで別の意味を持ってしまう。ここがお会計の英語のいちばんの難所です。
それでも、持って行くのはこの1文で足ります。
Could we get the bill, please?
アメリカ側では bill を check に入れ替え、どちらか迷ったら We’re ready to pay. と言えば、語を選ばずに済みます。
そして、伝票が来たら Total の行と、サービス料の行だけを見る。
この2つの行を読む習慣がつけば、チップで迷う時間も、二重に払う不安もなくなります。
あとは、Thank you. と言って店を出るだけです。
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