海外のレストランで、最後のお皿が下げられて、テーブルに細長い紙が置かれた瞬間のことです。
6人で来ていて、飲んだ量も食べた量もバラバラでした。
誰かが「割り勘でいいよね」と日本語で言って、全員がうなずきます。
そこまでは何の問題もありませんでした。
問題は、その次に店員さんの顔を見上げた瞬間に起きます。
英語で何と言えばいいのかが、まったく出てこないのです。
財布からカードを6枚まとめて出していいものかどうかも分かりません。
そもそも、この店が伝票を分けてくれるのかどうかも分かりません。
店員さんは笑顔で立ったまま待っていて、こちらの言葉を待っています。
誰かが英語で何かを言おうとして、途中で止まりました。
結局いちばん英語ができる人が全額をカードで払って、あとで全員が現金を渡す形になります。
その現金には端数があって、誰かが「いいよいいよ」と言い、誰かが少し多めに出します。
店を出たあとも、しばらく全員が財布を開いたまま歩くことになりました。
バーでも同じ形で足が止まります。
4人でビールを頼んだだけなのに、店員さんが「Together or separate?」と聞いてきます。
その2語は聞き取れたのに、どちらを選べば何が起きるのかが分からないのです。
割り勘の英語でつまずく理由は、単語を知らないからではありません。
英語の側が「割り勘」という日本語の1語を、いくつもの別の言い方に切り分けて持っているからです。
総額を頭数で割るのと、自分が食べたぶんだけ払うのとでは、使う語が変わります。
紙を1枚もらうのと、人数分もらうのとでも変わります。
そして、その紙に最初から入っている「サービス料」が、割り勘の計算そのものを変えてしまいます。
この記事では、Cambridge Dictionary で split・share・separate・separately・bill・check・go Dutch・chip in・treat・round・tab・tip・gratuity・service charge・cover charge・owe・change・cash・settle up・kitty・whip-round・each・pay・Dutch・half・receipt の26語を実際に引いて、語義の数をひとつずつ数えました。
あわせて、イギリス政府の「Tips at work」のページとチップ配分の法定行動規範、国税庁にあたるHMRCのチップとサービス料の手引き、その根拠になっている2024年の法令、EU公式案内のYour Europeのカード手数料のページ、アメリカ労働省のチップ労働者に関するファクトシート15、オーストラリアACCCのカード手数料のページ、カリフォルニア州司法長官の隠れ手数料のページ、アメリカFTCの手数料規則のページ2枚、そしてフランスの1987年3月27日付の政令の原文を開いて、会計の紙に何が載ってよくて何が載ってはいけないのかを確かめています。
出典として並べたのは、この記事を書きながら実際に開けたページだけです。
開けなかったページの内容や語義の数は、1行も書いていません。
読み終わったときに手元に残るのは、覚えるべき単語の一覧ではありません。
会計の紙が置かれた瞬間に口から出る、短い英文がいくつか残ります。
それだけで、割り勘の場面はほとんど片づきます。
割り勘の英語は「Can we split the bill?」の1文で足ります|先に結論
会計の紙が置かれた瞬間に必要なのは、この1文です。
Can we split the bill?
伝票を割ってもらえますか、という意味です。
please を足すと、そのまま丁寧な依頼になります。
Can we split the bill, please?
こちらも、伝票を割ってもらえますか、という意味です。
この split the bill という組み合わせは、私が作った表現ではありません。
Cambridge Dictionary のビジネス英語セクションで split を引くと、3番目の語義が「to divide money in order to share it between people, organizations, or groups」です。
人や組織やグループのあいだで分け合うためにお金を分ける、という意味になります。
その語義に添えられている組み合わせが「split sth two/three/four, etc. ways」で、例文は「We will split the profits three ways.」です。
つまり、人数を入れて「何等分するか」を言う形が、辞書に最初から用意されています。
6人で来ているなら、こう言えば通ります。
Can we split it six ways?
6等分にしてもらえますか、という意味です。
アメリカの店では、bill ではなく check を使う言い方のほうがよく通ります。
Can we have separate checks?
伝票を別々にしてもらえますか、という意味です。
この2つは似ているようで、頼んでいる中身がまったく違います。
split the bill は1枚の紙の金額を割る話で、separate checks は紙そのものを人数分に分ける話です。
この違いを知らないまま片方だけ言うと、出てきたものが想像と違って固まります。
そして、どちらを頼むにしても、その前にもう1つだけ聞いておくと計算が狂いません。
Is service included?
サービス料は入っていますか、という意味です。
このあとの章では、なぜこれだけの言い分けが必要になるのかを、辞書の語義の数を数えながらほどいていきます。
なぜ割り勘の英語で口が止まるのか|split の語義の数
日本語の「割り勘」は、1語で1つのことしか指しません。
みんなで出し合って払う、それだけです。
英語の split は、そこからかなり遠いところまで広がっています。
Cambridge Dictionary の英英セクションで split を動詞として引くと、番号のついた語義が7個並びます。
1番目が「to (cause to) divide into two or more parts, especially along a particular line」です。
特にある線に沿って、2つ以上の部分に分ける、または分かれる、という意味になります。
この語義に添えられた最初の例文が「The prize was split between Susan and Kate.」で、賞金がスーザンとケイトのあいだで分けられた、という意味です。
お金を2人で分ける話が、いちばん最初の語義の例文としてそのまま載っています。
2番目は「to form cracks」で、ひびが入る、という意味です。
例文は「The wooden floor had cracked and split in the heat.」で、木の床が暑さで割れた、という意味になります。
3番目は、組織やグループの人たちが意見の対立で小さく分かれること、という意味です。
例文には「split down the middle」という形が載っていて、真っ二つに割れる、という意味になります。
4番目が「If you split the difference, you agree on a number or amount that is exactly in the middle of the difference between two other numbers or amounts」です。
2つの数字のちょうど真ん中で折り合う、という意味で、日本語で言えば「間を取る」にあたります。
5番目は、合意に達するために自分の要求を下げたり意見を変えたりすること、という意味です。
6番目は「to tell other people secret and damaging information about someone」で、誰かの秘密を他人にばらす、という意味になります。
例文は「They knew Josie wouldn’t split on them to the teacher.」で、ジョシーが先生にチクらないことを彼らは知っていた、という意味です。
7番目は「to leave a place」で、その場を立ち去る、という意味です。
同じ split という1語に、お金を分けるも、決裂するも、チクるも、ずらかるも入っています。
名詞の split は、英英セクションで語義が4個です。
1番目は「a long, thin hole in something where it has broken apart」で、裂け目という意味になります。
2番目は意見の対立による分裂で、3番目は床に座って両脚を左右に伸ばす開脚、4番目はレースの区間タイムです。
アメリカ英語セクションの split は、動詞の語義が2個に減ります。
1番目は「to divide into two or more parts, esp. along a particular line」で、例文は「I suggest we split the profits between us.」です。
利益を私たちで分けることを提案します、という意味になります。
2番目は slang というラベル付きで「To split also means to leave a place」です。
例文は「The movie was boring, so I split.」で、映画がつまらなかったので出てきた、という意味になります。
名詞の split は、アメリカ英語セクションでは語義が1個だけです。
ビジネス英語セクションの split は、動詞の語義が6個あります。
3番目が、さきほどの「to divide money in order to share it between people, organizations, or groups」です。
4番目は株式分割で、5番目は意見が割れること、6番目は関係が終わることです。
名詞のほうはビジネス英語セクションでは語義が1個で、これも株式分割を指します。
英英・アメリカ・ビジネスの3セクションを足すと、split だけで語義は21個になります。
そのうち「会計を割る」に近いのは、たった3個です。
耳が止まるのは当然で、語そのものがこれだけ多義だからです。
だから split は、単独で使わずに the bill を付けて限定します。
split だけを投げると、相手は文脈から推測しなければならなくなります。
split the bill まで言えば、辞書の21個のうち1個に確定します。
ちなみに、辞書には「split the difference」という熟語が独立した見出しとして載っています。
これは会計の話ではなく交渉の話なので、割り勘のつもりで使うと別の意味になります。
割り勘の英語は bill と check で分かれます|イギリスとアメリカの違い
会計の紙を英語で何と呼ぶかは、国で割れています。
イギリスでは bill、アメリカでは check です。
これは感覚の話ではなく、辞書がそう書いています。
Cambridge Dictionary の英英セクションで bill を名詞として引くと、語義が9個並びます。
1番目は「a request for payment of money owed, or the piece of paper on which it is written」です。
払うべきお金の請求、またはそれが書かれた紙、という意味になります。
例文は「an electricity/gas/phone bill」で、電気代やガス代や電話代の請求書です。
2番目は熟語の形で「to pay for something」と書かれていて、例文は「Her mother agreed to foot the bill.」です。
母親が全額を払うことに同意した、という意味になります。
foot the bill は「全部おごる」であって、割り勘の反対側の言葉です。
3番目は議会にかける法案、4番目が問題の語義です。
4番目は「a piece of paper money」で、紙幣そのものを指します。
例文は「a dollar/one-dollar bill」と「a ten-dollar bill」です。
5番目は催し物の案内の紙、6番目と7番目は出演者の並び順の話です。
8番目は「the beak of a bird」で、鳥のくちばしです。
9番目は野球帽などのつばを指します。
動詞の bill は語義が3個で、1番目は「to give or send someone a bill asking for money that they owe for a product or service」です。
請求書を出す、という意味になります。
さらに英英セクションには the Bill という見出しが別にあって、語義は1個だけで「the police」です。
イギリスの口語では the Bill が警察のことになるので、大文字と the の付き方で意味が変わります。
アメリカ英語セクションの bill は、名詞の語義が5個に減ります。
1番目は「a list of expenses to be paid, or the total amount of costs or expenses」です。
2番目が決定的で、辞書はそのまま「A bill is also a check.」です。
つまりアメリカでも bill で通じることを、辞書が明言しています。
3番目は「a piece of paper money」で、例文は「He pulled out a thick wad of bills and gave me $20.」です。
札束を取り出して20ドルくれた、という意味になります。
次に check です。
Cambridge Dictionary の英英セクションで check を動詞として引くと、語義が9個並びます。
1番目は確認する、2番目は問い合わせる、3番目は食い止める、という意味です。
4番目は空港で荷物を預けること、5番目は一時的に物を預けることです。
6番目は情報が一致すること、7番目はチェックマークを付けること、8番目はチェスの王手、9番目はアイスホッケーの体当たりです。
名詞の check は、英英セクションで語義が10個あります。
1番目は点検、2番目は「US spelling of cheque UK」で小切手のアメリカ式つづり、3番目は格子柄です。
4番目が「a bill in a restaurant, etc.」で、レストランなどの勘定書という意味になります。
例文は「Can I have the check, please?」です。
勘定書をくださいという文が、英英セクションの例文にそのまま載っています。
5番目は「to limit something」という熟語の形で、6番目は権力の抑制と均衡、7番目はチェックマークです。
8番目から10番目は、チェスとアイスホッケーの用語です。
さらに間投詞の check があって、語義は2個です。
1番目は、持ち物を読み上げられたときに「あります」と答える返事です。
例文は「”Did you bring your sleeping bag?” “Check.” “Pillow?” “Check.”」です。
アメリカ英語セクションの check は、名詞の語義が7個です。
1番目が小切手で、例文は「She wrote me a check for $120.」です。
4番目が「a request for payment of money owed to a restaurant, or the piece of paper on which it is written」です。
レストランへの支払いの請求、またはそれが書かれた紙、という意味になります。
例文は「Waiter, may I have the check, please?」です。
ビジネス英語セクションの check は、名詞の語義が8個です。
5番目が「a piece of paper given to you when you have finished eating at a restaurant, showing how much money you owe」で、例文は「Can we have the check, please?」です。
英英・アメリカ・ビジネスの3セクションすべてに、レストランの勘定書としての check が載っています。
そして3つとも、例文が「勘定書をください」の形そのものです。
ここから分かることは1つです。
bill と check は、どちらを言っても相手は勘定書のことだと分かります。
辞書が両方に同じ意味を載せているからです。
ただし、アメリカで bill と言うと紙幣の語義とぶつかる可能性があり、イギリスで check と言うと小切手の語義とぶつかる可能性があります。
会計の場面ではテーブルに紙が置かれているので、実際には取り違えは起きにくいはずです。
これは辞書に書いてあることではなく、語義の重なり方から私が考えた読みなので、推測です。
迷ったら、国に合わせて言い換えるのがいちばん静かです。
イギリス・アイルランド・オーストラリアでは bill を使います。
アメリカ・カナダでは check を使います。
split the bill と separate checks|紙1枚か人数分かで別物になる割り勘の英語
ここが、この記事でいちばん大事な章です。
割り勘には、まったく違う2つのやり方があります。
1つ目は、1枚の紙に書かれた総額を、人数で割る方法です。
2つ目は、紙そのものを人数分に分けてもらう方法です。
前者が split the bill で、後者が separate checks です。
この違いを辞書から確かめるために、separate を引きました。
Cambridge Dictionary の英英セクションで separate を形容詞として引くと、語義は1個だけです。
語義は「existing or happening independently or in a different physical space」です。
独立して存在している、または物理的に違う場所にある、という意味になります。
separate の芯にあるのは「物理的に別になっている」という感覚です。
例文は「The art department and the music department are in two separate buildings.」です。
美術科と音楽科は2つの別々の建物にある、という意味になります。
動詞の separate は、英英セクションで語義が5個です。
1番目は「to (cause to) divide into parts」で、部分に分ける、という意味になります。
2番目は人を引き離すこと、3番目は2つを別のものとして考えること、4番目は液体が分離すること、5番目は夫婦が別居することです。
アメリカ英語セクションの separate は、形容詞の語義が1個、動詞の語義が2個です。
ビジネス英語セクションでは、形容詞の語義が1個、動詞の語義が2個です。
ビジネス英語セクションの形容詞の例文に「We have separate bank accounts.」があります。
私たちは別々の銀行口座を持っている、という意味になります。
副詞の separately も引きました。
英英セクションに語義は1個だけで、「not together」とだけ書かれています。
一緒ではなく、という意味です。
語義が1個しかないということは、取り違えようがないということです。
だから、会計で使ういちばん安全な文はこれになります。
Can we pay separately?
別々に払えますか、という意味です。
この文は split を使っていないので、辞書の21個の語義のどれとも当たりません。
何を言うか迷ったら、まず Can we pay separately? を出せば会話が前に進みます。
紙を人数分ほしいときは、こう言います。
Can we have separate checks?
勘定書を別々にもらえますか、という意味になります。
イギリス式に言うなら、こうです。
Can we have separate bills?
こちらも、勘定書を別々にもらえますか、という意味です。
総額をそのまま頭数で割るときは、split を使います。
Can we split the bill evenly?
伝票を均等に割ってもらえますか、という意味になります。
evenly を入れるかどうかで、相手のやることが変わります。
evenly が無いと、相手は「誰が何を食べたか」を聞いてくるかもしれません。
evenly を入れれば、総額を人数で割るだけになります。
人数を先に言ってしまうのも通りがいいです。
Four ways, please.
4等分でお願いします、という意味です。
この four ways という言い方は、さきほど見たビジネス英語セクションの split の3番目の語義に載っている形です。
辞書は「split sth two/three/four, etc. ways」と書いていて、数字を差し替えて使う前提になっています。
数字を入れるだけで、相手は電卓を叩けばよくなります。
なお、伝票を分けてもらうのは注文の前に頼んだほうが確実です。
これは辞書にも公的資料にも書いていないので、推測です。
ただ、伝票を分けるのはレジの操作なので、会計の直前より前のほうが店の手間が少ないという理屈は立ちます。
share・go halves・chip in・kitty|割り勘の英語をやわらかくする4つの言い方
split the bill は、いちばん通りやすい言い方です。
ただ、相手が友人で、店員さんに言うのではなく仲間内で相談する場面では、もっとやわらかい言い方があります。
まず share です。
Cambridge Dictionary の英英セクションで share を動詞として引くと、語義が6個並びます。
1番目は「to have or use something at the same time as someone else」で、同時に使う、という意味になります。
2番目が「to divide food, money, goods, etc. and give part of it to someone else」です。
食べ物やお金や物を分けて、その一部を誰かに渡す、という意味になります。
例文は「Let’s share the sweets (out) among/between everyone.」です。
3番目は「If two or more people share an activity, they each do some of it」で、例文は「Shall we share the driving?」です。
運転を交代でやろうか、という意味になります。
この Shall we share the 〜? の形が、そのまま会計に使えます。
4番目は感情や性質を共有すること、5番目は考えを打ち明けること、6番目はSNSでのシェアです。
名詞の share は、英英セクションで語義が4個です。
1番目が「a part of something that has been divided between several people」です。
何人かのあいだで分けられたものの一部、という意味になります。
そしてこの語義に添えられた最初の例文が、そのまま割り勘の文です。
The total bill comes to €80, so our share is €20.
合計が80ユーロなので、私たちの取り分は20ユーロです、という意味になります。
アメリカ英語セクションの share も、名詞の語義が2個あって、1番目の例文が「The total bill comes to $200, so our share is $40.」です。
ビジネス英語セクションの share は名詞の語義が3個で、1番目の例文がまたしても「The total bill comes to €80, so our share is €20.」です。
Cambridge Dictionary は3つのセクションすべてで、share の説明に「割り勘の計算」を使っています。
アメリカ英語セクションの動詞の share は語義が1個で、例文は「Why don’t we share the salad?」です。
サラダを分けない、という意味になります。
次は half です。
英英セクションで half を名詞として引くと、語義が8個並びます。
1番目は「either of the two equal or nearly equal parts that together make up a whole」で、半分という意味です。
2番目は「a lot」で、3番目は half past の時刻表現、4番目は half naked のように「半分だけ」という意味です。
5番目が、割り勘そのものです。
「to divide the cost of something with someone」と書かれていて、誰かと費用を分ける、という意味になります。
例文は「Shall we go halves on a bottle of champagne?」です。
Shall we go halves on a bottle of champagne?
シャンパンを1本、割り勘にしない、という意味になります。
go halves on 〜 は、2人で分けるときの決まり文句として辞書が載せています。
6番目は half and half の形、7番目と8番目は「half as many」「half as much again」といった量の比べ方です。
さらに英英セクションには別立ての half があって、こちらは語義が6個です。
試合の前半後半や、サッカーの自陣、ハーフパイントのビール、子ども料金の切符まで入っています。
5番目の「half a pint of a drink, especially beer」には「A pint of lager and two halves, please.」という例文が付いています。
パイントのラガー1つとハーフを2つください、という意味になります。
つまりイギリスのパブで halves と言うと、量のことになる可能性があります。
だから会計の場面では、go halves on という形をまるごと使って、単独の halves は避けます。
アメリカ英語セクションの half は、代名詞の語義が2個、形容詞の語義が2個です。
ここには「費用を分ける」という語義が載っていません。
次は chip in です。
Cambridge Dictionary で chip in を引くと、英英セクションの語義は2個です。
1番目が「to give some money when several people are giving money to pay for something together」です。
何人かで一緒に何かの代金を出すときに、いくらか出す、という意味になります。
例文は「They all chipped in £100 and bought their mother a trip to Greece.」です。
全員が100ポンドずつ出して、母親にギリシャ旅行を贈った、という意味になります。
2番目は「to interrupt a conversation in order to say something」で、会話に口をはさむ、という意味です。
アメリカ英語セクションの chip in は語義が1個だけで、例文は「They each chipped in $50 to take their parents out to dinner.」です。
それぞれが50ドルずつ出して、両親を夕食に連れて行った、という意味になります。
chip in は「均等に割る」ではなく「みんなで出し合う」です。
だから、誕生日の人のぶんをみんなで持つときに使えます。
Let’s all chip in for her dinner.
彼女の食事代はみんなで出そう、という意味になります。
最後は kitty と whip-round です。
英英セクションで kitty を引くと、語義が2個あります。
1番目は「an amount of money that is made up of small amounts given by different people, used by them for an agreed purpose」です。
いろいろな人が少しずつ出したお金が集まったもので、決めた目的に使う、という意味になります。
2番目は「a cat or kitten」で、猫のことです。
アメリカ英語セクションの kitty も語義が2個で、こちらも1番目がお金、2番目が猫です。
ビジネス英語セクションの kitty は語義が1個で、お金の意味だけです。
kitty は旅行の共同財布のことで、猫と同じつづりです。
whip-round は、英英セクションにしか載っていません。
語義は1個で「a collection of money made by a group of people that is then given to a particular person or used to buy a present for them」です。
グループで集めたお金を、特定の誰かに渡すか、その人へのプレゼントを買うのに使う、という意味になります。
アメリカ英語セクションにもビジネス英語セクションにも whip-round は無いので、これはイギリス寄りの語です。
go Dutch は割り勘の英語として安全か|辞書の語義は1つだけ
日本で「割り勘」を英語で言うとき、いちばんよく紹介されるのが go Dutch です。
実際にCambridge Dictionary で引いてみました。
英英セクションに go Dutch という見出しがあり、語義は1個です。
語義は「to agree to share the cost of something, especially a meal」です。
何かの費用、特に食事代を分け合うことに同意する、という意味になります。
語義そのものは、まさに割り勘です。
ただし、ここで手が止まりました。
この見出しには、例文が1つも付いていません。
さきほど見た split・share・half・chip in には、どれも例文が付いていました。
辞書が例文を載せていないということは、使い方の見本を見せていないということです。
さらに、アメリカ英語セクションにもビジネス英語セクションにも go Dutch は載っていません。
念のため Dutch を単独でも引きました。
英英セクションの形容詞の Dutch は語義が1個で、「belonging to or relating to the Netherlands, its people, or its language」です。
名詞の Dutch は語義が2個で、1番目がオランダで話される言語、2番目がオランダの人々です。
例文は「He and his son speak Dutch at home.」と「I think the Dutch are practical, businesslike people.」です。
Dutch という語そのものに、費用を分けるという語義は1つも載っていません。
費用を分ける意味が出てくるのは、go Dutch という熟語になったときだけです。
ここから言えることと、言えないことを分けます。
言えるのは、go Dutch という表現が辞書に載っていて、意味は割り勘だということです。
言えないのは、この表現が失礼かどうかです。
Cambridge Dictionary の go Dutch には、informal や offensive といったラベルが付いていませんでした。
だから「失礼だから使うな」とは、この辞書からは言えません。
一方で、例文が無いという事実は残ります。
split the bill や go halves on は、辞書が実際の文の形まで見せてくれています。
初めての店で、初めて会う店員さんに投げる文として、見本のあるほうを選ぶのは理屈が通ります。
だからこの記事では、go Dutch を否定はしませんが、最初の1文には選びません。
最初の1文は Can we split the bill? で、go Dutch は仲間内の雑談用に置いておきます。
今日は私が出しますの割り勘の英語|treat・tab・round・owe・settle up
割り勘をやめる側の英語も、同じ数だけ必要になります。
誰かの誕生日だったり、前回おごってもらっていたりするからです。
まず treat です。
Cambridge Dictionary の英英セクションで treat を動詞として引くと、語義が4個並びます。
1番目は「to behave towards someone or deal with something in a particular way」で、扱う、という意味です。
2番目は病気やけがを治療すること、という意味になります。
3番目が「to buy or pay for something for another person」です。
他の人のために何かを買ったり払ったりする、という意味になります。
例文は「Put your money away – I’m going to treat you (to this).」です。
財布をしまって、ここは私が出すから、という意味になります。
財布をしまってという言い方まで、辞書の例文がそのまま見せてくれます。
4番目は木材や布に特殊な処理をすること、という意味です。
名詞の treat は、英英セクションで語義が6個あります。
1番目は特別で楽しい出来事、2番目は自分を幸せにする買い物、3番目はお菓子、4番目はペット用のおやつです。
5番目が「an occasion when I, you, etc. buy or pay for something for another person」です。
誰かのために自分が払う場面、という意味になります。
例文は「No, you paid for dinner last time – this is my treat.」です。
No, you paid for dinner last time – this is my treat.
いや、前回はあなたが払ったから、今回は私が出します、という意味になります。
これは割り勘を断るときの、いちばん角の立たない言い方です。
6番目は work a treat のような「うまくいく」という熟語です。
アメリカ英語セクションの treat は、動詞の語義が4個、名詞の語義が2個です。
名詞の2番目が「an occasion on which you pay for someone’s food or entertainment」で、例文は「You paid for the taxi, so lunch is my treat (= I will pay).」です。
タクシー代を出してもらったから、昼食は私が払います、という意味になります。
ビジネス英語セクションの treat は、動詞の語義が3個です。
ビジネス英語セクションには「おごる」という語義が1つも載っていません。
扱う、処理する、加工する、の3つだけです。
つまり my treat は、仕事の場ではなく私的な食事の言葉だということになります。
次は tab です。
英英セクションで tab を名詞として引くと、語義が7個並びます。
1番目は書類に付ける見出しの紙片、2番目は缶のプルタブ、3番目はタバコ、4番目はLSDの紙片です。
5番目はブラウザのタブ、6番目はキーボードのタブ位置です。
7番目が「the total money charged in a restaurant or hotel for food, drinks, etc.」です。
レストランやホテルで飲食に対して請求される総額、という意味になります。
例文は「He kindly offered to pick up the tab (= pay).」です。
He kindly offered to pick up the tab.
彼が親切にも全額を払うと申し出た、という意味になります。
pick up the tab は foot the bill とほぼ同じで、どちらも全額を持つ側の言葉です。
アメリカ英語セクションの tab は語義が3個で、3番目が「an amount charged for a service or for a meal in a restaurant」です。
例文は「He offered to pick up the tab for lunch (= pay for it).」です。
ビジネス英語セクションの tab は、名詞の語義が5個、動詞の語義が2個です。
名詞の5番目が「a record of what you have ordered or used but not yet paid for, especially in a bar or restaurant」です。
バーやレストランで、注文したけれどまだ払っていないものの記録、という意味になります。
例文は「Just put it on the tab, please.」です。
Just put it on the tab, please.
それはツケにしておいてください、という意味になります。
海外のバーでカードを先に預けて飲み続ける方式が、この tab です。
最後に全部まとめて清算するので、割り勘の計算は最後の1回だけになります。
次は round です。
英英セクションで round を名詞として引くと、語義が9個あります。
1番目は一連の出来事、2番目が飲み物です。
「drinks that you buy for a group of people」と書かれていて、グループのみんなのために買う飲み物、という意味になります。
例文は「It’s your turn to buy a round.」と「He bought a round of drinks to say thank you.」です。
It’s your turn to buy a round.
次はあなたの番だよ、という意味になります。
round は割り勘ではなく、順番に全員分をおごり合う方式のことです。
3番目はトーストやサンドイッチの1枚、4番目は配達の巡回、5番目は輪唱です。
6番目は競技の回戦、7番目はボクシングのラウンド、8番目はゴルフの1ラウンド、9番目は弾丸です。
アメリカ英語セクションの round は名詞の語義が7個で、6番目が「A round (of drinks) is a drink for each person in a group.」です。
グループの各人に1杯ずつ、という意味になります。
イギリスのパブで round を断らずに受け取り続けると、自分の番が回ってきます。
そのときに「I’ll get this round.」と言えば、その1巡は自分が持つという意味になります。
次は owe です。
英英セクションで owe を動詞として引くと、語義が2個です。
1番目は「to need to pay or give something to someone because they have lent money to you, or in exchange for something they have done for you」です。
お金を借りたから、あるいは何かをしてもらったから、返す必要がある、という意味になります。
例文は「I owe Janet $50.」と「I owe you a drink for helping me move.」です。
引っ越しを手伝ってもらったから1杯おごる、という意味になります。
2番目は、成功や幸せが誰かのおかげであること、という意味です。
アメリカ英語セクションの owe も語義が2個で、1番目の例文は「Don’t forget – you owe me ten dollars.」です。
ビジネス英語セクションの owe も語義が2個で、2番目に「owe sb (one)」という形が載っています。
例文は「Thanks – I owe you one!」で、恩に着る、という意味になります。
割り勘であとから返すときは、How much do I owe you? の1文で足ります。
How much do I owe you?
いくら払えばいいですか、という意味になります。
最後は settle up です。
Cambridge Dictionary で settle up を引くと、英英セクションの語義は1個で「to pay someone the money that you owe them」です。
借りているお金を払う、という意味になります。
例文は「Would you like to settle up now, sir?」と「You buy the tickets and I’ll settle up with you later.」です。
前者は店員さんの側の文で、お会計は今なさいますか、という意味です。
後者は、チケットを買っておいて、あとで精算するから、という意味になります。
アメリカ英語セクションの settle up も語義が1個で、例文は「I’ve finished eating – just let me settle up and we can go.」です。
食べ終わったから、精算したら出よう、という意味になります。
ビジネス英語セクションの settle up も語義が1個で、こちらは取引先への支払いの例文が付いています。
settle up は、割り勘のあとの「あとで返すね」にそのまま使えます。
あわせて pay も引きました。
ビジネス英語セクションの pay には、語義と熟語が合わせて16項目あります。
その14番目が「pay your way」という熟語で、語義は「to pay for yourself rather than allowing someone else to pay」です。
他の人に払わせるのではなく、自分の分は自分で払う、という意味になります。
これが「割り勘にしたい」の、いちばん芯にある考え方です。
カードを何枚も出すときの割り勘の英語|EUとオーストラリアの原文
割り勘でいちばん怖いのは、カードを何枚も出す瞬間です。
店員さんに嫌な顔をされないか、追加の手数料を取られないかが分からないからです。
そこで、公的な文書に何が書いてあるのかを確かめました。
まずEUです。
EUの公式案内である Your Europe の「Pricing and payments」のページを開きました。
カード手数料について、こう書かれています。
Traders in the EU are not allowed to charge you extra for using your credit or debit card.
EUの事業者は、クレジットカードやデビットカードを使ったことを理由に追加料金を取ってはいけない、という意味です。
EU圏では、カードで払ったから高くなるということは原則として起きません。
ただし、同じページに例外が書いてあります。
The only exceptions to this rule are American Express/Diners Club cards and business or corporate credit cards, where your employer is billed instead of you.
この規則の唯一の例外は、アメリカン・エキスプレスとダイナースクラブのカード、そして請求が勤務先に行く法人カードだ、という意味になります。
さらに、その例外の場合でも上限があります。
If you use these cards, you may still be charged a fee but the fee can’t be more than what it actually costs the trader to process your payment.
これらのカードを使う場合は手数料を取られることがあるが、その手数料は事業者が決済を処理するのに実際にかかる費用を超えてはいけない、という意味です。
つまりEU圏では、個人のVISAやMastercardを何枚出しても、手数料の心配はほぼ要りません。
同じページには、値段の表示についても書かれています。
When you buy goods or services in the EU, you have to be clearly informed about the total price, including all taxes and additional charges.
EUで商品やサービスを買うときは、すべての税と追加料金を含めた総額を明確に知らされなければならない、という意味になります。
総額が最初に分かるということは、割り勘の計算が最後にひっくり返らないということです。
次にオーストラリアです。
オーストラリア競争・消費者委員会、略してACCCの「Card surcharges」のページを開きました。
こちらは、手数料を取ること自体は認めたうえで、上限を決めています。
the surcharge must not be more than what it costs the business to process that payment type
手数料は、その支払い方法を処理するのに事業者がかける費用を超えてはならない、という意味です。
そして、その「費用」の実際の幅が、2023年から2024年のデータとして載っています。
年商100万オーストラリアドル未満の小規模事業者では、デビットとeftposが0.85%から2%、クレジットが1%から2%です。
年商100万ドルから1億ドルの中規模事業者では、デビットとeftposが0.25%から1%、クレジットが0.75%から1.5%です。
年商1億ドル超の大規模事業者では、デビットとeftposが0.25%から0.5%、クレジットが0.5%から1%です。
小さな店ほど手数料の実費が高く、上限も高くなるという構造がそのまま数字に出ています。
すべてのカードで同じ手数料にしたい場合のルールも書かれています。
If a business wants to set the same surcharge for all card payment types, it must not be more than the lowest surcharge they can set
すべてのカードに同じ手数料を設定したいなら、その額は設定できる最低の手数料を超えてはならない、という意味になります。
手数料を避けられる支払い方法が無い場合のルールもあります。
the business must include the minimum surcharge payable in the displayed price
その場合、事業者は支払うべき最低の手数料を表示価格に含めなければならない、という意味です。
さらに、このページには今後の変更も書かれていました。
2026年10月1日から、Visa・Mastercard・American Express・eftpos の各カードネットワークが「no surcharge」ルールを導入します。
この日から、これらのカードでの支払いに手数料を上乗せできなくなります。
ここまでが公的資料から言えることです。
店がカードを何枚まで受け付けるかは、どの資料にも書いてありませんでした。
だから、枚数の上限については分かりません。
分からないので、最初に聞きます。
聞く文はこれです。
Can we pay with separate cards?
別々のカードで払えますか、という意味になります。
枚数を言うなら、こうです。
Can we split it across three cards?
3枚のカードに分けられますか、という意味です。
金額を指定するなら、こうなります。
Can you put fifty on this card and the rest on that one?
このカードで50、残りをあちらのカードでお願いできますか、という意味になります。
断られたときは、1枚で払って現金で回収する形に切り替えます。
That’s fine. I’ll pay the whole thing.
大丈夫です、私が全部払います、という意味です。
サービス料とチップは割り勘の英語より先に決まります|英政府と米労働省の原文
割り勘の計算を狂わせる最大の要因は、英語ではありません。
会計の紙にすでに乗っている、サービス料です。
まずイギリスから見ます。
イギリス政府のサイト GOV.UK の「Tips at work」のページを開きました。
いちばん大事な1文がこれです。
By law, all tips must be given to workers without deductions.
法律により、すべてのチップは天引きなしで労働者に渡されなければならない、という意味です。
店がチップから手数料を抜くことは、イギリスでは違法になりました。
同じページには、チップが最低賃金に算入されないことも書かれています。
If you get tips at work they do not count towards the National Minimum Wage.
仕事でチップを受け取っても、それは全国最低賃金には算入されない、という意味になります。
そして、チップの配り方として tronc という仕組みが紹介されています。
職場でチップを管理して分配するための、別立ての仕組みのことです。
この法律がいつから動いているのかを確かめるために、法定行動規範の本文も開きました。
GOV.UK の「Code of practice on fair and transparent distribution of tips」というページです。
施行日は Tuesday 1 October 2024 です。
2024年10月1日から、この規範が効いています。
この規範は、tips・gratuities・service charges の3つをまとめて単に tips と呼ぶ、と最初に宣言しています。
そのうえで、任意のサービス料の条件をこう定義しています。
it is made clear to the customer that the charge is a purely discretionary amount and there is no obligation to pay
その料金が純粋に任意の金額であり、支払う義務がないことが客に明確に示されている、という意味です。
客に明確に示されていなければ、それは任意のサービス料ではないということになります。
支払いの期限も決まっています。
by the end of the month following the month in which the tips are paid by customers
客がチップを払った月の翌月末までに、という意味になります。
6月23日に払われたチップなら、7月31日までに配らなければなりません。
この規範の根拠になっている法令も確かめました。
legislation.gov.uk で「The Employment (Allocation of Tips) Act 2023 (Code of Practice on Fair and Transparent Distribution of Tips) Regulations 2024」を開きました。
作成は2024年7月25日、議会への提出は7月29日、施行は10月1日です。
もう1枚、イギリスの国税庁にあたるHMRCの手引きも開きました。
「Guidance on tips, gratuities, service charges and troncs」というページです。
ここにチップの定義があります。
A tip or gratuity is an uncalled for and spontaneous payment offered by a customer.
チップや心づけとは、客が求められずに自発的に差し出す支払いのことだ、という意味になります。
求められていないこと、自発的であること。この2つがチップの条件です。
任意のサービス料の定義も同じ形で書かれています。
If it is made clear to the customer that the charge is a purely discretionary amount and there is no obligation to pay, the payment is a voluntary service charge.
料金が純粋に任意で支払い義務がないと客に明示されていれば、それは任意のサービス料だ、という意味です。
裏返した定義も書かれています。
Where a charge is not a purely discretionary amount and there is an obligation to pay, the payment is a mandatory service charge.
純粋に任意の金額ではなく支払い義務がある場合、それは必須のサービス料だ、という意味になります。
この必須のサービス料は、食事代の一部として扱われます。
同じ手引きでは、必須のサービス料を従業員に配った場合は国民保険料が必ずかかります。
次にアメリカです。
アメリカ労働省の「Fact Sheet #15: Tipped Employees Under the Fair Labor Standards Act (FLSA)」を開きました。
チップをもらう労働者の定義から始まります。
a tipped employee is an employee engaged in an occupation in which they customarily and regularly receive more than $30 a month in tips.
チップ労働者とは、月に30ドルを超えるチップを日常的かつ定期的に受け取る職業に従事する労働者だ、という意味です。
そして、事業主が払う最低の現金賃金が書かれています。
An employer must pay a tipped worker at least $2.13 per hour under the FLSA.
事業主はチップ労働者に、少なくとも1時間あたり2.13ドルを払わなければならない、という意味になります。
残りはチップで埋める形になり、その上限も明記されています。
The maximum tip credit that an employer can currently claim is $5.12 per hour: ($7.25 – $2.13 direct (or cash) wage = $5.12).
事業主が主張できるチップ控除の上限は1時間あたり5.12ドルで、連邦最低賃金7.25ドルから2.13ドルを引いた額だ、という意味です。
アメリカの店員さんの時給の7割は、客のチップで作られている計算になります。
そして、この記事にとっていちばん重要な1文がここにあります。
A compulsory charge for service, for example, 15 percent of the bill, is not considered a tip under the FLSA.
たとえば伝票の15%といった強制的なサービス料は、FLSAのもとではチップとはみなされない、という意味になります。
つまり、伝票に自動で乗っている15%や18%は、法律上はチップではありません。
同じファクトシートでは、そのサービス料から従業員に配られた金額を、最低賃金と残業代の支払い義務を満たすのに使えます。
ここから、割り勘の実務が決まります。
サービス料がすでに伝票に乗っているなら、その総額を頭数で割れば、サービス料も自動的に割れています。
乗っていないなら、チップを足してから割るか、チップだけ別に集めるかを決めることになります。
会計の前に聞く文は、この3つで足ります。
Is service included?
サービス料は入っていますか、という意味です。
Is the service charge included in the bill?
サービス料は伝票に含まれていますか、という意味になります。
Should we leave a tip on top?
その上にチップを置いたほうがいいですか、という意味です。
割り勘の英語についてよくある質問
ここまでで出てきた話のうち、実際の会計でよく迷うところを5つにまとめます。
割り勘の英語はsplitとshareのどちらが正しいですか
店員さんに伝票の扱いを頼むなら split、仲間内で自分の取り分を話すなら share です。
Cambridge Dictionary のビジネス英語セクションで split を引くと、3番目の語義が「to divide money in order to share it between people, organizations, or groups」で、お金を分けること自体を指しています。
一方の share は、アメリカ英語セクションの名詞の1番目に「The total bill comes to $200, so our share is $40.」という例文が載っていて、こちらは1人あたりいくらかという取り分の話です。
店員さんに言うのが split、仲間に言うのが share、と分けて覚えておけば取り違えません。
アメリカでbillと言っても通じますか
通じますが、check のほうが誤解が起きません。
英英セクションの bill には名詞の語義が9個あり、その中に紙幣の語義も入っているからです。
アメリカのレストランで Can we split the check? と言えば、紙幣の話と取り違えられる余地がなくなります。
go Dutchは失礼になりますか
辞書に載っている語義は1個だけで、失礼だと書いてある記述はありませんでした。
ただし形容詞の Dutch そのものには費用を分けるという語義が1つも載っていないので、相手の国によっては通じにくい言い方です。
迷うなら go Dutch ではなく split the bill を使ったほうが、どの国でも一度で通ります。
カードを何枚も出すと手数料を取られますか
EU圏では、個人のクレジットカードやデビットカードなら原則として取られません。
EUの公式案内 Your Europe の「Pricing and payments」に「Traders in the EU are not allowed to charge you extra for using your credit or debit card.」と書かれているからです。
オーストラリアでは、ACCCのページが「the surcharge must not be more than what it costs the business to process that payment type」として、処理原価を超える上乗せを認めていません。
サービス料が入っているときもチップは要りますか
まず伝票を見て、サービス料が乗っているかどうかを確かめます。
会計の前に Is service included? と1文だけ聞けば、そのあとの計算が全部決まります。
イギリス政府の「Tips at work」には「If you get tips at work they do not count towards the National Minimum Wage.」と書かれていて、チップは賃金の一部ではないことが明示されています。
この1文だけ覚えて帰ってください|割り勘の英語の総まとめ
この記事は長くなりましたが、会計の紙が置かれた瞬間に必要なものは、たった1文です。
Can we split the bill?
伝票を割ってもらえますか、という意味で、これが割り勘の英語の本体です。
アメリカの店なら bill を check に替えて、Can we split the check? と言います。
人数を先に言いたいときは Can we split it six ways? のように、数を入れた形にします。
紙そのものを分けてほしいなら、Can we have separate checks? と言えば、人数分の伝票が出てきます。
会計の前に Is service included? と聞いておけば、サービス料を二重に払う事故が起きません。
覚えるのはこの4文だけで、残りの語は全部、辞書の中の話です。
この記事で開いたページの一覧
| 開いたページ | そこから取った事実 |
|---|---|
| split/share/separate | 3セクションの語義の数と、お金を分ける語義に添えられた例文 |
| bill/check | 紙幣と小切手の語義が同居していること、英米で数が変わること |
| go Dutch/chip in/kitty | 語義の数と、それぞれが使われる場面の違い |
| treat/tab/tip/gratuity | おごる・つけ・チップの語義と、ビジネス英語セクションの載り方 |
| Your Europe|Pricing and payments | カード利用を理由にした追加料金の禁止と、総額表示の義務の原文 |
| ACCC|Card surcharges | 上乗せは処理原価を超えてはならないという原文と、今後の変更 |
| GOV.UK|Tips at work | チップが最低賃金に算入されないこと、控除なしで働き手に渡ること |
| U.S. DOL|Fact Sheet #15 | チップを受け取る労働者の賃金の扱い |
制度や金額は変わることがあるので、最新の内容は各公式ページでご確認ください。
\旅先で通じる英語をいちばん早く/
メールアドレスの登録だけで1分で見始められる
今なら全4回の動画講座が完全無料
Comments