
英語脳の作り方は?
英語を聞くと、頭の中で日本語に訳しているうちに話が先へ進んでしまいます。
英語脳の作り方は、英語を日本語に訳さずに分かる体験の回数を、少しずつ増やしていくことです。
- 二言語の記憶を説明する研究のモデルでは、学び始めは外国語の単語を母語の訳を通して理解し、力が付くにつれて単語と意味が直接つながっていくと考えられています。
- 直接のつながりを太くするには、絵や場面と英語を結びつける、英語の語順のまま読む、意味の分かる英語を大量に聞く、の3つが柱になります。
最初から日本語を完全に消す必要はありません。
筆者が、二言語の記憶を扱った心理学の論文や、言語習得の研究書、瞬間英作文の出版社の解説を読んで確かめ、英語脳を作る練習を順番に並べ直しました。
この記事を読めば、
- 頭の中で訳してしまう理由
- 訳さずに分かる回数を増やす7つの練習
- 自分のレベルでどれから始めるか
が分かり、今日の練習から「訳す時間」を減らしていけます。
英語脳の作り方は訳さずに分かる回数を増やすこと
「英語脳」は学術用語ではありませんが、学習の世界では、英語を英語のまま理解し、英語のまま組み立てられる状態を指して使われています。
Apple と聞いて、りんごという日本語を通らずに、赤くて丸い果物の姿が浮かぶ状態です。
こうした状態は、ある日突然切り替わるものではありません。
訳さずに分かった体験が1回、また1回と積み重なって、その範囲が少しずつ広がっていきます。
つまり英語脳の作り方とは、訳さずに分かる英語の範囲を、簡単なものから順に広げていく作業です。
Thank you や Good morning を聞いて、いちいち訳す人はほとんどいません。
よく使うあいさつは、すでに英語のまま分かる範囲に入っているからです。
この範囲を、あいさつから日常の文へ、日常の文から長い説明へと広げていくのが、英語脳の作り方の全体像です。
日本語を消す必要はない
英語脳という言葉から、日本語をいっさい使わずに学ぶことを想像する人もいます。
しかし、学び始めの段階で日本語の訳を頼りにするのは、ごく自然な流れです。
日本語を追い出すのではなく、日本語を通らない近道を少しずつ増やす、と考えるのが現実的です。
単語の意味を確かめるときや文法の仕組みを理解するときは、日本語の説明を使って構いません。
英語脳が要る場面
英語脳がいちばん役に立つのは、話す・聞くのように、時間を待ってくれない場面です。
読む場合は自分のペースで戻れますが、会話では相手の話がどんどん先に進みます。
聞く・話すで差が出るのはそのためです。
たとえば旅先で道をたずねると、相手は曲がる場所や目印を続けて説明してきます。
1文ずつ訳していると、2つ目の曲がり角を聞いているうちに、1つ目の説明を忘れてしまうのがよくあるつまずきです。
英語のまま順番に聞き取れれば、説明を最後まで追いかけられます。
英語脳とは何か|作り方の前に知る研究の話
英語脳という考え方に近いものは、二言語の記憶を扱う心理学の研究にも出てきます。
二言語の記憶のモデル
よく知られているのが、クロール氏とスチュワート氏が1994年に発表した「改訂階層モデル(Revised Hierarchical Model)」です。
このモデルでは、母語の単語、外国語の単語、そして両方が共有する「意味」の3つがつながっていると考えます。
- 母語の単語と意味のつながりは太い
- 学び始めの外国語の単語は、母語の単語を経由して意味にたどり着きやすい
- 外国語の力が付くと、外国語の単語と意味の直接のつながりが太くなっていく
論文はJournal of Memory and Language 第33巻(1994年)に掲載されています。
外国語から母語へ訳すときと、母語から外国語へ訳すときで、たどる道が違うという点も、このモデルの特徴です。
外国語の単語を見て母語の訳を思い出すのは、単語どうしのつながりを使えるので速く済みます。
反対に、母語から外国語の単語を出すときは、いったん意味を経由する必要があるため、時間がかかりやすいという考え方です。
英語を聞いて分かるのに、英語で言おうとすると詰まる、という学習者の実感とよく重なる説明です。
英語脳を作るとは、このモデルでいう「英語の単語と意味の直接のつながり」を太くすることに近いと言えます。
英語脳のよくある誤解
英語脳については、いくつか誤解されやすい点があります。
- 誤解:留学しないと作れない → 実際:意味の分かる英語に触れる量が大事
- 誤解:子どもでないと作れない → 実際:大人も訳さずに分かる範囲を広げられる
- 誤解:日本語を一切使ってはいけない → 実際:理解の段階では日本語を使ってよい
場所や年齢より、訳さずに分かる体験をどれだけ積んだかのほうが大切です。
英語脳の作り方の土台|日本語と英語の語順の違い
訳してしまう理由の1つに、日本語と英語の語順の違いがあります。
英語は「だれが・どうする・何を」の順に並ぶのに対して、日本語では動詞が文の最後に来ます。
後ろから訳す癖
学校で英文和訳に慣れた人ほど、英文を最後まで読んでから、後ろから日本語に並べ替える癖が付いています。
この並べ替えは、読むときは時間をかければできても、聞くときには間に合いません。
英語の語順のまま、前から意味を取っていく練習が、英語脳の作り方の土台になります。
前から区切って読む
前から意味を取る練習には、英文を意味のまとまりで区切って読む方法が向いています。
- I went / to the station / to meet my friend / yesterday.
- 私は行った/駅へ/友だちに会うために/きのう
区切りごとに、英語の順番のまま意味を足していきます。
日本語としては不自然でも、この順番で分かれば十分です。
道をたずねる一文のように、よく使う形は丸ごと覚えてしまうのも手です
How do I get to 〜? の1文で道をたずねる方法は、道を聞く英語の記事で練習できます


英語脳の作り方7つ
ここからは、訳さずに分かる回数を増やす練習を7つ紹介します。
- 絵や場面と英単語を結びつける
- 前から区切って読む
- 意味の分かる英語をたくさん聞く・読む
- 音読とリピーティング
- 目に入ったものを英語でつぶやく
- 英英辞典で意味を確かめる
- 実際に英語で会話する
絵や場面で単語を覚える
単語を覚えるとき、英単語と日本語訳を並べるだけでなく、絵や写真、実際の場面と結びつけます。
たとえば umbrella なら、傘の写真を見ながら言う、雨の日に傘を開くときに言う、のように使います。
日本語を通らずに、英語と意味を直接つなぐ最初の練習です。
絵のある単語帳や、写真に英単語を書き込むアプリのような道具も、この練習に使えます。
動詞は、自分が実際にその動作をしながら言うと、場面と一緒に覚えられます。
区切り読みを続ける
上で紹介した、英文を意味のまとまりごとに区切り、前から理解していく読み方です。
慣れてきたら、区切りの線を引かずに、頭の中で区切りながら読むようにします。
速く読むことより、戻らずに読むことを目標にします。
分かる英語を大量に入れる
言語習得の研究で知られるクラッシェン氏は、少し上のレベルの英語を理解しながら受け取ることを、習得の中心に置きました。
a necessary (but not sufficient) condition to move from stage i to stage i + 1 is that the acquirer understand input that contains i + 1
(クラッシェン氏の著書『Principles and Practice in SLA』より)
ここで大切なのは「理解できる」という条件です。
分かる英語を選ぶことが第一です。
辞書を引かずに8〜9割分かるくらいの、少しやさしめの英語を、たくさん聞いたり読んだりします。
学習者向けにやさしく書き直された読み物や、語学講座の音声は、この条件に合わせやすい教材です。
NHKの語学講座を聞ける「NHKゴガク」アプリは、サービスの利用に料金はかからず、通信費だけが自己負担になります。
ラジオ番組のストリーミングは日本国内限定なので、海外にいる人は使える範囲を先に確かめておきます。
音読とリピーティング
意味の分かった英文を、音声をまねして声に出して読みます。
1文ずつ止めてくり返すリピーティングは、英語の語順のまま文を口に出す練習にもなるのが利点です。
声に出すと、英語の順番で意味を取る感覚が口と耳の両方に残ります。
目に入ったものをつぶやく
家や通勤の途中で目に入ったものや、自分の動作を英語で短くつぶやきます。
- I’m making coffee.
- It’s raining outside.
- The train is late today.
日本語で考えてから訳すのではなく、目の前の場面から直接英語を出すのがコツです。
出てこなかった表現はメモしておき、あとで調べて次のつぶやきに使います。
注文や支払いで口を開く回数が多い8つの型は、海外旅行の英語フレーズの記事にまとめています


英英辞典で確かめる
英和辞典で日本語の訳を見る代わりに、学習者向けの英英辞典で、英語の説明を読んで意味を確かめます。
学習者向けの英英辞典は、やさしい英語で説明が書かれているので、中級に入った人なら無理なく使える道具です。
英語の説明で分かる単語が増えると、その単語は日本語を通らずに頭に入ります。
実際に英語で話す
最後は、相手のいる会話で英語を使う練習です。
会話では、日本語に訳している時間がないため、訳さずに分かる範囲がそのまま試されます。
話してみて詰まったところが、次に練習する材料になります。
英語脳の作り方の順番とレベル別の選び方
7つの練習は、全部を一度に始める必要はありません。
自分のレベルに合わせて、始める練習を選びます。
| 今のレベル | 始める練習 | ねらい |
|---|---|---|
| 初心者(中学英語があいまい) | 絵や場面で単語・音読 | 英語と意味を直接つなぐ |
| 初級(中学英語は読める) | 前から区切って読む・分かる英語を大量に入れる | 後ろから訳す癖を外す |
| 中級(ゆっくりなら話せる) | つぶやき・英英辞典・会話 | 英語のまま組み立てる |
表は、7つの練習をレベルに合わせて並べた筆者の整理です。
初心者の進め方
初心者は、まず中学で習う単語と文型を、絵や場面と結びつけながら声に出すところから始めます。
この段階では、日本語の説明で文法を理解することも大切です。
日本語で仕組みを理解したら、あとは英語のまま何度も口に出して慣らしていきます。
初級から中級の進め方
中学英語が読める人は、前から区切って読む練習と、分かる英語を大量に入れる練習を中心にします。
ゆっくりなら話せる人は、つぶやきや会話を増やして、英語のまま組み立てる時間を伸ばします。
どの段階でも、意味の分かる英語を使うことは変わりません。
中級に入ったら、ニュースやポッドキャストのように、自分の興味のある話題の英語に広げていくと続けやすくなります。
興味のある話題は、背景を知っている分だけ、訳さずに分かる割合が高くなりやすいからです。
英語脳の作り方で避けたいこと
英語脳を作るうえで、遠回りになりやすい勉強のしかたもあります。
後ろから訳し続ける
英文を読むたびに、最後まで読んでから後ろから訳す練習だけを続けると、訳す癖がかえって強くなります。
和訳は理解の確認にとどめ、確認が終わった英文は前から読み直します。
同じ英文を、訳さずに前から分かるまで読み直すのが、英語脳への近道です。
分からない英語を流し続ける
意味の分からない英語を聞き流し続けても、訳さずに分かる体験は増えません。
クラッシェン氏の考えでも、条件は「理解できる」英語を受け取ることでした。
聞くなら分かる英語を選びます。
単語と訳だけを覚える
単語帳で「英単語=日本語訳」の組だけを覚え続けると、英語を見るたびに日本語の訳を呼び出す道が太くなります。
覚える量が増えても、訳してから理解する流れは変わりません。
単語は、例文や場面と一緒に覚えて、英語のまま使う機会を作ります。
1つの単語につき、自分の生活に当てはめた短い例文を1つ作って声に出すだけでも、使い方が身につきやすくなります。
英語脳の作り方と言い換えの考え方
英語脳を作るもう1つの近道は、日本語の単語を英語に置き換えようとしないことです。
1語ずつ置き換えない
日本語の文を1語ずつ英語に置き換えようとすると、知らない単語に当たった時点で止まってしまいます。
たとえば「締め切りに間に合わない」なら、I can’t finish it by Friday. のように、知っている英語で言える形に言い換えるのが手です。
言いたい中身を、知っている英語で組み直すこと自体が、英語で考える練習になります。
少ない語彙で話す
少ない語彙で言い換えて話すのは、約1,500語の基本語で話すグロービッシュや、インド式英会話でも重視されている考え方です。
インド出身の講師サチン・チョードリー氏が、この言い換えの考え方を全4回の無料動画講座で公開しています。
- 炊飯器 → a machine for cooking rice
- 通勤する → I take the train to work.
- 締め切りに間に合わない → I can’t finish it by Friday.
難しい単語を増やすより、知っている単語で言える範囲を広げるほうが、英語のまま考える時間は長くなります。
英語脳の作り方で起きる変化
訳さずに分かる範囲が広がると、英語を使う場面でいくつかの変化が起きます。
返事までの時間が縮む
会話では、相手の話を聞いてから自分が答えるまでの時間が、話しやすさを大きく左右します。
訳す手間が減る分だけ、聞いてから答えるまでのすき間が短くなるのは自然なことです。
相手を待たせる時間が減ると、会話そのものが続きやすくなります。
聞き取りが追いつく
後ろから訳す癖が外れると、英語の語順のまま意味を取れるようになります。
話の途中で置いていかれる回数が減るのが、いちばん実感しやすい変化です。
長い英語に向き合える
1文ごとに訳していると、長い説明や会議の英語を聞き続けるのは大変です。
前から意味を取れる範囲が広がるほど、長い英語にも付いていきやすくなります。
英語脳の作り方を毎日の習慣にする方法
訳さずに分かる体験は、毎日少しずつ積むほうが増やしやすくなります。
| 時間帯 | 練習 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 朝 | 音読とリピーティング | 10分 |
| 通勤・家事 | 分かる英語を聞く | 15分 |
| 夜 | 前から区切って読む | 10分 |
| 寝る前 | 今日の出来事を英語でつぶやく | 5分 |
表は、1日40分を4つに分けた筆者の作例です。
時間と場所を決める
練習を続けるコツは、やる時間と場所を先に決めておくことです。
朝の歯みがきのあとに音読、通勤の電車で聞く、のように、すでにある習慣のあとに付けると忘れにくくなります。
毎日同じ流れにすると、始めるまでの迷いがなくなるのが大きな利点です。
忙しい日は減らして続ける
忙しい日は、40分を全部やろうとせず、つぶやきの5分だけでも続けます。
ゼロの日を作らないことが、訳さずに分かる体験を積み重ねるいちばんの近道です。
1か月ごとに確かめる
進み具合は、同じ英語の音声を1か月おきに聞き直して確かめます。
1回目に聞いたときに、訳さずに分かった文がどれくらいあったかをメモしておくのがポイントです。
1か月後に同じ音声を聞いて、訳さずに分かる文が増えていれば、英語脳は確実に育っています。
比べる相手は他の人ではなく、1か月前の自分です。
英語脳の作り方のよくある質問
英語脳の作り方について、よく出る質問に答えます。
- 英語脳は大人でも作れますか?
-
作れます。
二言語の記憶の研究でも、外国語の力が付くにつれて、外国語の単語と意味の直接のつながりが太くなると考えられています。
年齢より、訳さずに分かる体験をどれだけ積んだかが大切です。
- 英語脳は留学しないと作れませんか?
-
留学しなくても作れます。
意味の分かる英語を聞く・読む量と、英語で口に出す量を増やせば、日本にいても訳さずに分かる範囲は広がります。
- 英語脳を作るのに役立つアプリはありますか?
-
意味の分かる英語をたくさん聞くには、語学講座の音声が聞けるアプリが使えます。
NHKの語学講座を聞ける「NHKゴガク」アプリは、利用に料金はかからず、通信費だけが自己負担です。
- 英語脳になるまでどれくらいかかりますか?
-
一度に切り替わるものではないので、決まった期間はありません。
よく使う表現から順に、訳さずに分かる範囲が広がっていきます。
- 瞬間英作文は日本語を使うので英語脳の邪魔になりますか?
-
瞬間英作文は、日本語を見て英語で言う練習ですが、ねらいは組み立ての速さを上げることです。
出版社の解説でも、答え合わせのあとに英文を音読して口に落ち着ける手順を、いちばん大切な段階に挙げています。
英文を音読する段階で、英語のまま口に出す練習ができます。
英語脳の作り方のまとめ
英語脳の作り方は、訳さずに分かる体験を、簡単な英語から順に増やしていくことです。
日本語を追い出すのではなく、英語と意味が直接つながる近道を少しずつ増やしていきます。
練習は、絵や場面で単語を覚える、前から区切って読む、分かる英語を大量に入れる、の3つが柱です。
知っている英語で言い換えて話す練習も、英語のまま考える時間を伸ばしてくれます。
言い換えて話すコツを動画で見たい人は、下の無料講座から始められます。
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あわせて読みたい。
訳している間に聞き逃したときの一言は、聞き返す英語の記事で確かめられます


- Category Interference in Translation and Picture Naming: Evidence for Asymmetric Connections Between Bilingual Memory Representations(Journal of Memory and Language)
- Principles and Practice in Second Language Acquisition(Stephen Krashen)
- どんどん話すための瞬間英作文トレーニング(ベレ出版)
- NHKゴガク アプリ(NHK)








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